仕事の流儀、と、散歩介助

 訪問介護員による散歩の同行については、適切なケアマネジメントに基づき、自立支援、日常生活活動の向上の観点から、安全を確保しつつ常時介助できる状態で行うものについては、利用者の自立した生活の支援に資するものと考えられることから、現行制度においても、介護報酬の算定は可能である。
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/170/touh/t170091.htm

という内閣総理大臣名の答弁書が出された、少し後の話です。

ある自治体で、事業者指導用に、この件についての考え方をまとめることになりました。
主管課で原案が作られ、出先の担当機関にも意見を求められました。

で、意見が出され、どのようになったかというと・・・
{赤色}<青色>に修正されました。意見が反映されなかった箇所もありましたが。
(なお、記事立てに際し、主旨を損なわない範囲でわかりやすく改変している場合があります。)



原案
 通所介護、短期入所介護、訪問介護における買い物等の外出介助など、外出を伴う介護サービスを利用している利用者は、閉じこもりがちの利用者とは言えません。

修正後
 通所介護、短期入所介護、訪問介護における買い物等の外出介助など、外出を伴う介護サービスを利用している利用者は、<一般的には>閉じこもりがちの利用者とは言えません。


原案
 次のような場合については、訪問介護の対象とはなりません。
例1 散歩が日課であった利用者の要望に応じるため
    →個人の嗜好によるものであるため対象外
例2 単に外を歩きたい、気分転換したいという利用者の要望に応じるため
    →日常生活上必要な援助にあたらず、対象外
 例1及び例2{は、本来の訪問介護の目的の1つである「日常生活の援助」に該当しないため、これらを目的とした場合は算定の対象とはなりません。}

修正後
 次のような場合については、訪問介護の対象とはなりません。
例1 <単に>散歩が日課であった利用者の要望に応じるため
    →個人の嗜好によるものであるため対象外
例2 単に外を歩きたい、気分転換したいという利用者の要望に応じるため
    →日常生活上必要な援助にあたらず、対象外
 例1や例2<のみを目的とするサービスは算定の対象外です。単に要望があるからではなく、当該サービスが必要かどうかかで判断する必要があります。>


原案
 アセスメントの結果、散歩を訪問介護に位置付けられる利用者は、原則次の状態にあることとします。
(略)
・他のサービス(訪問介護の外出介助を含む)の利用{が現時点では困難である}こと

修正後
 アセスメントの結果、散歩を訪問介護に位置付けられる利用者は、原則次の状態にあることとします。
(略)
・他のサービス(訪問介護の外出介助を含む)の利用<と比較検討して必要と考えられる>こと



原案
 当該利用者の居宅サービス計画に次のことを必ず記載すること。
(1)略
(2)他の介護サービス等{によるサービス利用ができない}理由

修正後
 当該利用者の居宅サービス計画に次のことを必ず記載すること。
(1)略
(2)他の介護サービス等<と比較検討して必要と判断される>理由


原案
 利用者の状態が改善した場合など、散歩が{利用者の状態の改善につながるという状態}が解消された場合には、当該利用者について、散歩を訪問介護のサービス提供に位置付けることは不要となることから、同じ利用者であったとしても利用者の状態によって、報酬算定対象外となることがあること。

修正後
 利用者の状態が改善した場合など、散歩が<必要と判断される状態>が解消された場合には、当該利用者について、散歩を訪問介護のサービス提供に位置付けることは不要となることから、同じ利用者であったとしても利用者の状態によって、報酬算定対象外となることがあること。



いかがでしょうか。
ちょっとマシになっただけで、あまり変わらない、という見方もできます。
ただ、「ちょっとマシになった」ということに意義を見出して仕事する流儀もあります。

個人的には、上の内閣総理大臣答弁書だけでええやん、とは思うのですが。

なお、もしも「散歩が訪問介護の対象になるかならないか、どっちでもいいから行政で決めてくれ」
というご意見の方がいらっしゃったとしたら・・・

お気の毒ですが、当ブログには、そういう方に参考になる記事はあまりないと思います。