ワクチン・パブコメの素案(2)

3.ワクチンの確保について

(1)国内産ワクチンの確保
 ・国内産ワクチンについては、優先接種対象者に対して、できる限り早期に接種機会を提供するためには、早急に必要量を確保する。

 ・日本国内におけるワクチンの製造については、7月中旬以降、各メーカーにおいて順次製造を開始し、現時点の見通しとしては、10月下旬以降順次出荷され、1mlバイアルの場合には、平成22年3月までに、約1,800万人分(※)が出荷可能と考えられている。また、できる限り多くの者が国内産ワクチンを接種できるようにするため、ワクチンの効率的な確保と接種の際の利便性とのバランスを図りながら、可能な限り10mlバイアルによる効率的な接種を行う計画を策定し、それに応じた10mlバイアルと1mlバイアルの生産割合を決定する。

※ 現在のワクチン製造株の増殖率に基づく、年度内の製造推定量は、約2,200万人分(1mlバイアルで製造した場合)から約3,000万人分(10mlバイアルで製造した場合)。今後、製造株の増殖率が減少する可能性を考慮し(2割程度減少との見込み、1mlバイアルで製造した場合)、約1,800万人分としている。

(2)輸入ワクチンの確保
 ・今後の感染の拡大やウイルスの変異等のおそれを踏まえると、重症者の発生などの健康被害を防止するためには、国内での製造ワクチンだけでは十分な供給量とは言い難いので、健康危機管理の観点から海外企業から緊急に輸入し、一定量のワクチンを確保する。

 ・輸入ワクチンについては、早ければ12月下旬以降に使用可能と考えられているため、2(3)に掲げた者への接種に用いることを想定する。

 ・ただし、輸入ワクチンを実際に使用するために、事前に安全性等について更なる確認を行う必要がある。

 ・輸入ワクチンについては、国際的なワクチン需給についても配慮し、発展途上国への供与なども検討する。

4.留意事項

 今回、接種に用いようとするワクチンについては、今回の新型インフルエンザに対して初めて使用されるものであり、未知の要素があることから、十分に安全性の確保に努めるとともに、医療関係者、国民等に幅広く情報提供を行う。

(1) 安全性の確認について
ア.国内製造ワクチンについて

 今回使用される国内製造の新型インフルエンザワクチンは、季節性インフルエンザワクチン(HAワクチン)と同様の方法で製造されるものである。従って、安全性については、季節性インフルエンザワクチンとほぼ同程度であると考えられる。なお、有効性についても、ある程度期待されると判断される。

イ.輸入ワクチンの承認時の安全性、有効性の確保について

 輸入ワクチンについては、
 ①現時点では国内外での使用経験・実績(臨床試験を除く。)がないこと
 ②国内では使用経験のないアジュバント(免疫補助剤)(※)が使用されていること
 ③国内では使用経験のない細胞株を用いた細胞培養(※)による製造法が用いられているものがあること
 ④投与経路が筋肉内であること
 ⑤小児に対しては用量が異なること
 など、国内ワクチンとは異なる。有効性については、ある程度期待されると判断される。一方、我が国で大規模に接種した場合の安全性に関しては、国内製品よりも未知の要素が大きく、その使用等に当たっては、より慎重を期すべきとの懸念も専門家から示されている。

アジュバント(免疫補助剤):ワクチンと混合して投与することにより、目的とする免疫応答を増強する物質。これにより、同じワクチン量でもより多くの者への接種が可能となる。一般的に、副反応の発生する確率が高いことが指摘されている。
※細胞培養:ワクチンの製造方法の一種。鶏卵による培養よりも、生産効率は高いとされるが、インフルエンザワクチンではこれまで世界で広く使用されるには至っていない。また、一部の海外のワクチンについては、製造に使用される細胞に、がん原性は認められないものの、腫瘍原性があるとされており、使用等にあたっては、特に慎重を期すべきとの懸念も専門家から示されている。

 したがって、健康危機管理の目的から、特例的に、通常の承認の要件を緩和して、緊急に承認を与える場合であっても、薬事食品衛生審議会において、
 ①承認申請の際に添付される海外臨床試験成績等の資料により、その安全性について確認するとともに、
 ②国内での臨床試験中に、中間的に安全性について確認する
 などの対応を講じる。
 また、特例的な承認後も、国内及び海外で実施されている臨床試験における安全性を引き続き確認していく。万が一、安全性に問題があるおそれがある場合には、使用しないこと、使用中止もあり得る。

ウ.安全性情報の収集、評価等について

 国内製造ワクチンを含め、ワクチンについては、短期間に多数の接種が行われることとなるため、
 ①薬事法に規定する製造販売業者及び医薬関係者による副作用報告
 ②接種事業による医療機関等から国への副反応報告
 ③欧米等の規制当局、WHOからの安全性情報の入手
 等により安全性情報の速やかな収集に努める。
 また、その評価については、いわゆる紛れ込み事故(※)に留意し、ワクチン接種との関連性や接種規模を踏まえた発生状況などについて専門家による評価を行い、迅速な安全対策を講ずることとする。副反応を科学的に評価するための基礎的データを収集するシステムについて、専門家の意見を聞きながら検討する。

※紛れ込み事故:予防接種後に身体に異常反応を疑う症状がみられた場合、ワクチンの副反応が疑われるが、ワクチン接種によるもののほか、多数の接種を行った場合、偶発的に感染した疾病により引き起こされる等のワクチン接種と関連ない場合も考えられ、そのようなものを指して紛れ込み事故と呼ぶことがある。

エ.健康被害の救済

 以上の措置を講じたとしても、万が一、副反応による健康被害が生じた場合には、適切な救済措置を講ずる。

(さらに続く)