集中減算・地方では

平成27年度介護報酬改定案では、居宅介護支援の特定事業所集中減算制度が見直される予定です。

具体的には、
1)福祉系3サービス(訪問介護通所介護福祉用具貸与)だけでなく、他のサービスについても適用される。
2)減算対象ラインが90%超から80%超に引き下げられる。
とされています。

まず、「正当な理由」として国が例示しているのは、審議会資料や留意事項通知では、次のような内容です。


[1] 居宅介護支援事業者の通常の事業の実施地域に訪問介護サービス等が各サービスごとでみた場合に5事業所未満である場合などサービス事業所が少数である場合
(例) 訪問介護事業所として4事業所、通所介護事業所として10事業所が所在する地域の場合
紹介率最高法人である訪問介護事業者に対して、減算は適用されないが、紹介率最高法人である通所介護事業者に対して、減算は適用される。
[2] 特別地域居宅介護支援加算を受けている事業者である場合
[3] 判定期間の1月当たりの平均居宅サービス計画件数が20件以下であるなど事業所が小規模である場合
[4] サービスの質が高いことによる利用者の希望を勘案した場合などにより特定の事業者に集中していると認められる場合
[5] その他正当な理由と都道府県知事(指定都市及び中核市においては、指定都市又は中核市の市長)が認めた場合


今回の改定案にはこだわらず、従来からあったこの減算制度の問題点について、特に過疎地などサービス事業所が少ない地方を念頭に考えてみます。
(なお、大都市圏に近い地域でもけっして無縁のことではないとは思います。)



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A市、B町、C町、D町、E村が合併して、新しいA市になったような場合です。
実際には、ほぼ旧市町村単位でサービス提供していますが、境界付近で別の事業所からの方が近い住民や、旧市町村の枠を超えて転居する住民などの利便を考慮して、どの事業所も新A市全域を「通常の事業の実施地域」としています。
機械的に事業所数を数えれば、図の場合、8になりますが、実質的には、旧A市における3という数字が最大です。
判定する指定権者(都道府県や政令市、中核市)が実質論(後者)で判断すれば(5事業所未満なので)減算には当たりませんが、形式論(前者)で通そうとするなら、「通常の事業の実施地域」を旧市町村単位に変更してしまう対応も考えられます。


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次の例。B市では5法人がサービス提供していますが、法人アの供給力が飛び抜けて強く、一強多弱の状況です。あ、今の国会みたいですね。
普通にケアプランを作れば、たぶん法人アの位置付けが8割を超えるでしょう。

こんなことは起こり得るのか、という疑問が出るかもしれませんが、たとえば訪問系で、訪問スタッフ(ヘルパーや訪問看護師)の員数や稼働時間に大差があれば、可能性はあります。
極端な例では、法人アが訪問看護ステーションで、他の事業者が医療機関の「みなし指定事業所」の場合。
(もっとも、「みなし指定事業所」の数的な取り扱いには、自治体差が出るかもしれません。)

また、「紹介事業所」ではなく、「紹介法人」で判定することにも注目。
たとえば上の新A市のような例で、n、o、p、q、r、xの事業所が、すべて同一法人だったら?
合併後の市社会福祉協議会などでは、普通に起こり得る話です。

まあ、制度自体が(今回の改定案の前から)出来が悪いので、事業者にとっても自治体にとっても、そしてもちろん利用者にとっても迷惑な話です。