療養病床削減問題とパブリックコメント

介護型療養病床:全廃の方針見直し 厚労相が答弁
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091103k0000m010041000c.html
毎日新聞 2009年11月2日 19時54分(最終更新 11月2日 21時22分)
 長妻昭厚生労働相は2日の衆院予算委員会で、自民党政権が決めていた介護型療養病床の全廃方針について、「凍結し、患者が本来受けるべき医療、介護を受けられるようにしたい」と述べ、全面的に見直す考えを明らかにした。

これについては、いろいろご意見があるところでしょうが、この機に(どさくさのうちに?)記事にしていなかったパブリックコメント結果を。

介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針の一部改正に関する御意見について

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?ANKEN_TYPE=3&CLASSNAME=Pcm1040&btnDownload=yes&hdnSeqno=0000050969

平成21年3月31日
厚生労働省老健局計画課

 厚生労働省では、介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針の一部改正について、平成21年2月16日から平成21年3月17日まで御意見を募集したところ、8人から16件の御意見をいただきました。
 お寄せいただいた主な意見とそれらに対する当省の考え方について、以下のとおり取りまとめましたので、御報告いたします。なお、取りまとめの都合上、いただいた御意見等は、適宜整理集約して掲載しております。

平成21年度を始期とする、第4期介護保険事業計画の策定にあたり、療養病床の取扱いや介護予防の効果の考え方以外は基本的に第3期を踏襲しており、その方向性で平成19年度及び20年度における全国会講等の国の説明を踏まえ、これまでの間、内部での議論や計画策定委員会等を経て、パブリックコメントや議会への報告、都道府県との協議を行ってきたところ。
しかしながら、施行直前の時期になり、平成26年度の必要利用定員総数の設定が計画上追加されることは非常に唐突である感が否めなく、パブリックコメント終了後の3月17日以降に、いちからこれまでの手続きをやり直すことは物理的に困難であり、現実的ではない。国は、都道府県、市町村における計画策定スケジュールを考え、平成26年度の必要利用定員総数の設定については、削除すべきである。
平成26年度の必要利用定員総数の見込みについては、基本指針上規定しないこととし、改めて調査することを検討したい。

平成26年度における必要利用定員総数の見込みを定めることは、いくら見込みであっても自治体における今後の施設整備量を表すことであり、そこまでの整備量は約束されたものと理解されたり、逆に言えばそこまでしか整備しないのかとも理解される。また、住民の負担する保険料にも大きな影響を及ぼすものであることから、高度な政策的、政治的判断を要する作業となる。
平成26年度の必要利用定員総数の見込みについては、基本指針上規定しないこととし、改めて調査することを検討したい。

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<参考>公募時の画面
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=495080440&OBJCD=100495&GROUP=



何度読んでもわかりにくい文章だと思いますが、ともかく、私の意見も「8人16件」のうちのひとつだったんですね。
以前、限定記事に載せたものを、臆面もなく再掲してみますが、適宜整理集約の過程の中で消えたものもあるようです。

 介護療養型医療施設からの転換分はともかく、医療療養病床からの転換を別枠とすることは正当な理由がない。
 地域状況を勘案し、介護保険サービスと費用のバランスを取るべく在宅サービス中心の基盤整備を進めてきた自治体の努力を踏みにじるものである。
 また、介護保険の費用には、われわれ2号被保険者が負担している部分もあることも想起していただきたい。医療費の削減さえできれば介護保険はどうなってもかまわないというような現行の厚生労働省の方針は容認できるものではない。
 さらに、医療療養病床、介護療養型医療施設とも、削減することが本当に必要なのか、不明確である。医療の必要性が高い要介護者が、介護老人保健施設では受け入れを事実上拒否され、やむなく特別養護老人ホーム等、看護職員等が十分とはいえない場所で受け入れられている現実もある。どうしても療養病床等の削減を強行するなら、医療の必要性が高い要介護者の受け皿対策と、医療費・介護費双方の財政的見直しについて、一般国民にも明確に理解できるように根拠のある数字を示して説明する必要がある。

このパブリックコメントは、厳密には、療養病床削減の是非を問うものではなく、第4期介護保険事業計画等のための指針についてのものなので、私の意見は国が求めているものとは異なるという考え方もできるとは思います(もちろん、21年度から始まる計画についての指針をこの時期にパブコメにかける、ということ自体は、批判されて当然ですが)。
ただ、前提の「療養病床の削減」について、パブリックコメントで国(前政権時代)が意見を求めた、という記憶は私にはありません。