和歌山ALS訴訟の地裁判決

和歌山市のALS訴訟の続報です。
(前記事)
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/29543806.html

地裁で認められた「仮の義務付け決定」は、その後、高裁、最高裁で覆されたのですが、
和歌山地裁の正式判決が4月25日に出ました。


ALS介護延長、初の認定…和歌山地裁判決

(2012年4月26日 読売新聞)
http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20120426-OYO1T00216.htm?from=main3

 全身の筋肉が弱る筋萎縮性側索硬化症(ALS)で24時間介護が必要なのに、和歌山市がサービスを1日8時間としたのは障害者自立支援法に反するなどとして、同市の男性(75)が介護保険分と合わせて24時間介護となる1日21時間のサービスと、慰謝料100万円を求めた訴訟の判決が25日、和歌山地裁であった。高橋善久裁判長は「市の決定は裁量権を逸脱しており違法」として、1日17・5時間に引き上げるよう命じた。慰謝料請求は認めなかった。

 ALS患者への介護サービス時間増を命じる判決は全国で初めて。男性の介護時間は、介護保険分と合わせて1日12時間から21時間に増える。


介護保険分の1日3.5時間という算出過程は、以前の記事で書いたようにわからないのですが、
介護保険訪問介護)3.5+障害福祉サービス(重度訪問介護?)17.5=21(時間/日)
というのが、地裁が認めたサービス必要量のようです。

以下のメディアでも報道されています。



2012年4月26日 読売新聞(和歌山版)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/wakayama/news/20120425-OYT8T01155.htm


拾い読みすると、

<状況>
男性は足の不自由な妻(74)と2人暮らし。頻繁なたんの吸引や人工呼吸器の管理が必要。(読売)

左足小指など体の一部しか動かず、人工呼吸器を付けている。
公的介護に加え、妻とヘルパーのボランティアにより24時間態勢で介護をしている。(毎日)

現在では寝たきりで会話もできず、わずかに動く左足の小指を使ってパソコンで思いを伝えるのが精いっぱい。(読売・和歌山)

<市の主張>
家族の介護が原則で、8時間以上は不公平になる(読売)

判決理由など>
妻の状態などから21時間のサービスがないと男性の生命に危険がある
市は障害程度や介護者の状況を適切に考慮していない(読売)

(1日約12時間とした)市の決定は合理性に欠き、患者の生命、身体、健康の維持に重大な危険が発生する恐れがある
患者は寝たきりでほぼ常時、介護サービスを必要とする状態
たん吸引や人工呼吸器の管理など生存に関わる介護の必要性や、70代の妻への負担を考慮すると、少なくとも1日21時間は必要(産経)

<市長のコメント>
判決文を確認して対応を検討する(読売)
判決の詳細を把握していないので判決文を確認し、対応について検討していきたい(産経)

なお、地裁レベルの判決なので、市が控訴する可能性はあります。

ただ、報道の中にある
「家族の介護が原則」というのは、障害者自立支援法その他の法令には理念的にも全く規定されていませんし、
「8時間以上は不公平になる」というのも、今の世の中では通用しないと思います。
支援の必要量が多い人と少ない人とに差が生じるのは、「不公平」とはいえません。