マスメディアの安田氏擁護論への危惧

安田さん解放に「英雄として迎えないでどうする」 テレ朝・玉川徹氏、「自己責任論」を批判

J-CASTニュース 2018/10/24 16:56)

 3年に渡ってシリアの武装勢力に拘束されていたフリージャーナリストの安田純平さんが解放されたとの情報を受け、安田さんをめぐる「自己責任」の議論がインターネット上で再燃している。だが、テレビ朝日解説委員の玉川徹氏は「釘を刺しておきたい」として自己責任論を強く否定した。

 玉川氏は2018年10月24日の「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)で、紛争地帯に飛び込むフリージャーナリストの役割の大きさを力説。安田さんを「英雄として迎えないでどうするんですか」と主張した。
https://www.j-cast.com/2018/10/24341971.html?p=all


いわゆる「自己責任論」の噴出については、私も気になる点があるのですが、今回の安田氏に対する、この玉川氏のような意見については、もっと疑問があります。

以下、上の記事から抜粋。

 安田さんをはじめ、紛争地帯で取材するジャーナリストに関する新情報が報道されるたびに、自ら現地に入っていったのだから「自己責任」だとする声がインターネット上では噴出する。だが、こうした風潮に、政治や社会問題などを30年取材している玉川徹氏は「モーニングショー」で、「自己責任論というのを僕は否定しておきたい。釘を刺しておきたい」と反論。「そもそも、ジャーナリストは何のためにいるんだ。民主主義を守るためにいるんですよ」として力説した。

「民主主義といっても国や企業で権力を持っている人たちは、自分達の都合のいいようにやって隠したいんですよ。隠されているものを暴かない限り、私たち国民は正確なジャッジができないんです。それには情報がいるんですよ。その情報をとってくる人たちが絶対に必要で、ジャーナリストはそれをやっているんです。フリーのジャーナリストは命を懸けてやっているんです。一番危ないところに行かれているんですよ、安田さんは。そういう人を守らないでどうするんだ」

ここまでは、一般論として主張することはアリだろうと思います。
ただ、ここにも気になる点はあります。
「国や企業で権力を持っている人たち」の全てが「自分たちの都合のいいようにやって隠したい」と考えているわけではないと思います。
まあ、そういう人が多少なりとも存在する以上、国などに批判的なメディアがあること自体は悪いことではないとして、
マスメディアのジャーナリストという権力を持った人が、間違った報道をしたときに、非を認めて公表するのではなく、「自分達の都合のいいようにやって隠したい」と思うのを(誰が)どのように防ぐか、ということも重要だろうと思います。


 さらに、「たとえて言えば、兵士は国を守るために命を懸けます。その兵士が外国で拘束され、捕虜になった場合、解放されて国に戻ってきた時は『英雄』として扱われますよね。同じことです」と、「兵士」を引き合いに出し、安田さんが解放されて帰国するとなった場合について、

「民主主義が大事だと思っている国民であれば、民主主義を守るために色んなものを暴こうとしている人たちを『英雄』として迎えないでどうするんですか」

と主張した。

 その上で改めて「何ですか自己責任論って。国に迷惑かけたって何ですか。その人たちは民主主義がいらないんですか。僕は敬意をもって迎えるべきだと思います」と、「自己責任」と突き放す風潮を批判した。

ここですね。
兵士は、自分で望んで外国に行っているのでしょうか?
徴兵制の国では、明らかに違います。
志願兵制の国でも、兵士個人が自分の判断で外国に行くことは、まずありません。
相当上の士官、指揮官であったとしても、通常は組織として決定された命令に従って、外国に行きます。
フリージャーナリストが、国が発する危険情報などを無視して行くことと同列に扱うことはできません。

それと、迷惑はかけています。ただ、その詳しい内容は、外交上、あるいは他の在外邦人保護等の必要上、外務省などが明らかにすることはないでしょう。
ただし、迷惑をかけている以上に、日本人の評価を高めるような活動をしている場合はあると思います。でも、それは直接人道支援などに携わっているにも関わらず拘束されたような人たちであって、安田氏の場合とは違うと思います。

また、国の勧告に従わずに危険地域に行くことを危惧することが、「民主主義がいらない」ことにつながる理屈が、私にはわかりません。


 玉川氏は「解放されて国に戻ってきたら『良かったね。命をかけて頑張ったね』と声をかけますよ」とも述べている。安田さん解放情報を受け、同様の考えを表明しているジャーナリストは少なくない。

「助かってよかった」と考えている人は、安田氏の行動に批判的な人たちの中にも多数います。
助かってよかった、ということと、氏の行動の是非とは別の話です。氏の身内の方にとっても同様かもしれません。


 戦場ジャーナリスト志葉玲氏は24日未明、ツイッターで「安田純平さん、これまでの水面下の動きでの経緯から考えて、身代金を日本政府が払った可能性は極めて低い。なので、バッシングしないでね」とし、「あと、報道各社も取材したいのは同業者としてわかるけど、まずは安田さんやそのご家族を休ませてあげて」と労いの言葉を投稿した。

日本政府が払わなかったとしても、カタール政府が払えば、武装集団に資金が渡ったことでは同じです。
ただし、この件がなかったとしても、資金提供は行われている可能性が高いので、ここでは深く触れません。


 ジャーナリストの布施祐仁氏は23日深夜、ツイッターで「あぁ本当によかった。それしか言葉が出ない。2004年4月の時のことが蘇る」と投稿。当時、イラク武装勢力によって日本人が立て続けに拉致され、そのうちの1人は安田さんだった。布施氏は続けて、

「ジャーナリストは生きてこそ取材したことを伝えられる。安田さん、生きていて本当によかった」

と安堵している。

「生きていて本当によかった」というのは私も同じ気持ちです。
ただ、今後も同様の若者が出てくることがよいのか、という点で、安田氏擁護論者とは差があるのだろうと思います。