集中減算・会計検査院の提言の真偽は

ネット上の話ですが、居宅介護支援事業所の特定事業所集中減算について、

会計検査院が廃止の提言>をした、

というようなことを書いている人があり、それに対して

会計検査院としては「見直し」「十分な検討」>を提言したのであり、「廃止の提言」ではない、

と書いている人もいます。

結論から言えば、後者の方が正しいということになりますが、より正確なニュアンスをつかみやすくするために、私の過去記事から抽出しています。



「集中減算の見直しを勧告」
https://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/34611235.html

介護保険制度の実施状況に関する会計検査の結果についての報告書(要旨)
平成28年3月 会計検査院
http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/28/pdf/280325_youshi_01.pdf

2 検査の結果
(2)介護サービス等の実施状況
イ 特定事業所集中減算とケアマネジメントの公正・中立の確保
(ア)集中割合の状況等
 21都県に所在する支援事業所18,605事業所のうち24年度後期又は25年度前期の判定期間に居宅サービス計画を作成していた支援事業所から抽出した2,230事業所について、その作成した居宅サービス計画に位置付けられた3居宅サービスの中で集中割合が最も高いサービスの集中割合の状況を調査したところ・・・(略)

(イ)特定事業所集中減算の効果
(略)特定事業所集中減算は、支援事業所の方針として単一の居宅サービス等事業者を居宅サービス計画に位置付けるなどとしている一部の支援事業所に対しては、厚生労働省が期待できるとしている、居宅サービス計画に位置付けられる居宅サービスが特定の居宅サービス事業者の提供するものに不当に偏らないようにする牽制効果が十分に生じていないと考えられる。

(ウ)27年度改定に対する支援事業所の対応等
(略)27年度改定を踏まえた対応方針について回答した132事業所のうち66事業所(50.0%)は、集中割合が80%以下となるように集中割合の調整を既に行っているか又は今後行うことを検討していると回答しており、27年度改定は、ケアマネジメントの公正・中立の確保を推進するものとはならないおそれがある状況となっていた。
 上記調査の過程では、ケアマネジャーから、[1]個々の利用者の人格を尊重し、利用者の立場に立って居宅サービス計画を作成した結果として集中割合が高くなる場合があることなどを踏まえると、特定事業所集中減算のケアマネジメントの公正・中立を確保するための制度としての有効性については疑問がある、(略)
 以上を踏まえると、集中割合に一定の基準を設け、これを正当な理由なく上回る場合には介護報酬を減額するという特定事業所集中減算は、ケアマネジメントの公正・中立を確保するという所期の目的からみて、必ずしも合理的で有効な施策であるとは考えられず、むしろ一部の支援事業所においては、集中割合の調整を行うなどの弊害を生じさせる要因となっていると考えられる状況となっていた。

3 検査の結果に対する所見
(2)介護サービス等の実施状況について
イ 特定事業所集中減算とケアマネジメントの公正・中立の確保について
 厚生労働省において、ケアマネジメントの公正・中立の確保に関する各方面の意見等について十分に把握するとともに、十分な検証を行った上で、ケアマネジメントの公正・中立を確保するための合理的で有効な施策の在り方等について、特定事業所集中減算の見直しも含め、十分に検討すること


たしかに、所見として特定事業所集中減算の見直しも含め、十分に検討することとあります。

ですが、

・不当に偏らないようにする牽制効果が十分に生じていない
・(50%が)集中割合の調整を既に行っているか又は今後行うことを検討していると回答
・27年度改定は、ケアマネジメントの公正・中立の確保を推進するものとはならないおそれがある状況
・ケアマネジメントの公正・中立を確保するための制度としての有効性については疑問がある
・必ずしも合理的で有効な施策であるとは考えられず
・一部の支援事業所においては、集中割合の調整を行うなどの弊害を生じさせる要因

などと、酷評されています。
「見直し」「検討」と官公庁お得意の緩和的な表現にはなっていますが、一般の国民が読んで「廃止の提言」と思ったとしても、あまり責められないのではないかと思います。
(それを、この分野での知識があると思われているような人がブログ等で書いてよいか、というのは議論があるかもしれませんが。)

なお、箇条書きで抜き出した箇所のうち、一番上の青い部分を除いて、27年度改定後(集中減算が福祉系3サービス以外にも拡大され、かつ集中の制限割合が8割に引き下げられたとき)の状況ということになります。

しかしながら、この抜き書きした状況は、訪問介護通所介護福祉用具貸与だけが対象の時には当てはまらないものではなく、むしろ訪問介護通所介護などに関連して(事業所の交換などの)調整措置が行われやすいとも考えられるとすれば、
平成26年度以前の制度に戻せばよい」というような安易な考え方は会計検査院の提言の理念に反する
と私は思います。