スズメバチのこと(暫定)

車いす女性、50分間スズメバチに刺され死亡 150カ所 付き添い職員、蜂が多すぎ救助できず 愛媛・大洲市

(産経WEST 2017.10.6 10:35更新)

 愛媛県大洲市長浜町で9月、電動車いすの菊地チヱ子さん(87)がデイサービスの男性職員に付き添われ帰宅途中、スズメバチに約50分間にわたり刺され、死亡していたことが6日、大洲地区広域消防事務組合消防本部などへの取材で分かった。ハチが多く、約150カ所刺されていたという。付き添いの職員は救助できず、駆け付けた救急車も防護服を用意していなかった。

 消防本部によると、9月11日午後4時ごろ、菊地さんがデイサービス施設の送迎車を降り、30代の職員に付き添われて自宅に戻る途中スズメバチに襲われた。職員は菊地さんから離れた場所で施設に連絡。菊地さんを助けようとしたが、大量のスズメバチがおり、近づけなかったという。ハチの巣は付近の住宅の軒下にあり、既に駆除された。職員も刺されたという。

 施設から連絡を受け、15分ごろ、救急車が到着したが、防護服を用意しておらず近づけなかった。同45分ごろ、ハチが減ったため、市内の病院へ搬送したが、12日午後11時ごろ、転送先の病院で多臓器不全のため死亡した。

 消防本部は防護服を用意していなかった理由について「通報時は既に安全な場所にいると判断した。しっかり情報収集ができていなかった」としている。

 施設の担当者は「無事に送迎できなかったことは痛恨の極み。ご家族には申し訳ない」と謝罪。今後、当時の対応を検証する。

 大谷剛・兵庫県立大名誉教授(昆虫行動学)は「8月終わりから9月はスズメバチの巣が一番大きくなり、個体数が多い。直径60センチだと千~3千匹いる。巣は雨がかからない空き家の軒下や屋根裏、やぶの中に作られやすい。目の前にハチが現れたら慌てて手で振り払いたくなるが、刺激しないように遠ざかることが大切。スズメバチは大きく動く物にびっくりし、巣を守るために仲間と一斉に攻撃してくる」と注意を呼び掛ける
http://www.sankei.com/west/news/171006/wst1710060030-n1.html


スズメバチに150カ所刺され…車いすの87歳死亡

朝日新聞 2017年10月6日11時26分)
http://www.asahi.com/articles/ASKB63F13KB6PFIB001.html

こちらの記事から補足。

・・・女性の自宅近くの空き家付近でハチに襲われた。まず同行職員が刺され、女性の車いすを約1メートル動かしたが、周囲に多数のハチが現れ、「一人では助けられない」と判断して施設に連絡。その間に多数のハチが女性に群がる状態になった。施設関係者数人が駆けつけて女性に雨具をかぶせようと試みたが、救助は難航したという。

 午後4時15分ごろに救急隊員3人が駆けつけたが、救急隊員は防護服などがなかったため、レスキュー隊員の出動を要請。同45分ごろにはハチが少なくなり、救急隊員が女性を救助して病院に運んだが、翌日、多臓器不全で死亡した。現場は山間部。空き家の軒下にスズメバチの巣があった。

空き家なので、それまで巣に気がつかなかったのかもしれません。
人が住んでいたら、巣が大きくなる前に家族等が気がついて、駆除(専門家に頼んで)されていた可能性があります。
また、「スズメバチ」というだけで種類が書かれていませんが、人家の近くに巣があったことから、最大・最強のオオスズメバチではなくキイロスズメバチかコガタスズメバチあたりのような気がします。
(でも危険であることには変わりありません。)

とんでもなく痛ましい出来事ですが、それならどうしたらこの悲劇を避けられたか、というと、かなり難しいと思います。

一般に、スズメバチの攻撃を避けるためには、

・巣や縄張りに近づかない。
・香水や化粧は避ける。
・黒っぽい服よりは白っぽい服にする。
・髪の毛など黒っぽい部分は帽子などで隠す。
・手で振り払ったりしない。
・襲われたら身を低くして静かに遠ざかる。

などといわれますが、攻撃されて多数の個体が集まってくると、ハチ自身が興奮状態になっていますから、これらのこともあまり意味を持たないでしょう。

電動車いすの性能や、地面の状態(未舗装路などで素早く動かすことができないなど)にもよりますが、
あえて可能性を探れば、ハチが群がろうがとにかく車いすを操作して現場(巣のある場所)から遠ざかること。

巣から一定距離(10m~50mぐらいという情報が多い)離れると、追いかけてこないか、攻撃が弱まる可能性があるようです。
(たとえば)
http://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Article/824/442/suzumebachi,0.pdf

これは、あとから(しかも現場の状況を知らずに)考えたことなので、対応したデイサービスの職員を責めるつもりはありません。
(これでも助かるとは限らないし、職員の被害もさらに大きくなるかもしれません。)
ただ、最近は都市部でもキイロスズメバチなどが生息し、今回のようなこともいつどこで起きるかわからないので、対応は考えておくに越したことはないでしょう。

もちろん、ハチの専門家から対応策が提示されたり、対応に有力なアイテムが入手できるようなら、そちらによっていただくのは当然です。