消費税軽減策・財務省案は論外

麻生氏、軽減税率「面倒くさい」与党合意に背反

(読売新聞 2015年09月05日 21時51分)

 消費税率の10%引き上げ時に生活必需品の税率を低くする軽減税率制度の導入について、麻生副総理・財務相は4日夜(日本時間5日未明)、外遊先のトルコで記者団に「複数税率(軽減税率)を入れることは面倒くさい」と述べ、見送る意向を示した。

 増税分に見合う金額を後から給付する財務省の原案を軸に、政府案づくりを検討する意向だ。自民、公明両党の合意と、それに続く与党協議をないがしろにしかねない発言といえる。

 財務省の原案は、消費税率を8%から10%に引き上げた時に、ほぼ全ての飲食料品について、税率2%分に相当する金額を後で給付する仕組みだ。消費者が実際に何をどのくらい購入したかにかかわらず、所得や世帯構成などに応じて消費額を推計する。買い物時に、対象品目に低い税率が適用される軽減税率とは異なる。財務省原案の対象品目は「酒類を除く飲食料品」とする案が有力だ。

 自公両党による軽減税率の議論では、対象について「酒類を除く飲食料品」「生鮮食品」「精米」を軸に検討が進められてきた。
(ここから先は一般公開されていないので略)
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20150905-OYT1T50039.html


消費税10%時に低所得者へ給付金 軽減税率の代案 財務省

(産経ニュース 2015.9.5 08:10更新)
 生活必需品の消費税率を低く抑える「軽減税率」をめぐり、平成29年4月の消費税10%への増税時の導入を見送った上で、軽減税率に代わる低所得者対策として、給付金を支給する案財務省が検討していることが4日分かった。給付金にすると、事業者の事務負担の増加が避けられ、支給対象に所得制限を設けることができる。

 自民、公明両党が来週にも再開する軽減税率の制度設計を検討する協議会で提示するとみられる。だが、公明党低所得者対策で軽減税率導入を強く訴えており、調整は難航しそうだ。
(略)
http://www.sankei.com/politics/news/150905/plt1509050011-n1.html


軽減税率:代替案 給付金、酒除く食品対象 所得制限検討 財務省

毎日新聞 2015年09月06日 東京朝刊)

 財務省は、消費税の軽減税率に代わる負担軽減策として検討している給付金について、酒類を除く飲食料品すべてを対象にする一方、もらえる人に所得制限を設け、還元するお金を増税分の一部にとどめる案をまとめた。国民一人一人に番号を割り振るマイナンバー制度を使って、支払った消費税額を記録し、給付額を算出することも検討している。【朝日弘行】

 軽減税率は生活必需品の消費税率を低く抑える制度。自民、公明両党は消費税率が10%に引き上げられる2017年度からの導入を目指してきた。これまで軽減税率の適用対象として「酒類を除く飲食料品」「生鮮食品」「精米」の3案を検討してきたが、対象品目の線引きや経理事務の煩雑さなどをめぐり議論は難航していた。

 財務省は解決策として、軽減税率の導入を見送り、給付金を配る代替案を検討。負担軽減の対象を、ほぼすべての飲食料品にすることで、難航していた対象品目の線引きの問題を解消した格好だ。麻生太郎財務相は4日(日本時間5日未明)、訪問先のトルコ・アンカラで記者団に「複数税率を入れるのは面倒くさい。面倒くさくないようにする」と語り、近く自民、公明両党による与党協議に提示する方針を明らかにした。

 財務省の試算では、酒類を除く飲食料品を対象にした場合、消費税を2%引き上げた分をすべて給付に回すと、税収減は年間1兆3000億円に上る。このため、同省は給付金をもらえる人に所得制限を設けたり、給付金額に上限を設けたりして還元するお金を消費税引き上げ分の一部にとどめたい考えだ。

 給付額については、世帯の所得に応じた消費のモデルケースを想定し、酒類を除く飲食料品の購入額と支払う消費税を推計して決めることを検討する。ただ、実際の購入額に関係なく給付額が決まると、負担と給付にズレが生じる可能性もある。政府は来年1月から交付を始めるマイナンバーカードを活用し、買い物の際にいったん10%の消費税を支払う一方、このカードを提示してもらうことで購入履歴を把握することも想定する。低所得者ほど厚く給付するなど、所得水準に応じて還元するしくみを検討している。
(略)
http://mainichi.jp/shimen/news/20150906ddm002010068000c.html


いろいろな報道があり、ツッコミどころも多数ですが・・・

・「世帯の所得に応じた消費のモデルケース」では、きわめて不正確です。
 そもそも消費税の導入の背景には、所得だけでは担税力を把握しきれない、ということもあったと思います。低所得だが高資産という人もあります。(残念ながら)所得を誤魔化している人々(や法人)もあります。不正を行っている人々が正直な人々(あるいは、ほぼガラス張りのサラリーマン)と同等の軽減給付が受けられることになってしまいます(軽減税率なら、多少なりとも抑制される)。

・「低所得者に給付する」という制度では、「低所得者」の範囲を制限していくことが危惧されます。
 たとえば、「'''政令で定める金額'''以下の所得の者に給付・・・※」というような条文にして、「政令で定める金額」を内閣の意向で(国会にかけずに)500万円→300万円→200万円・・・というように引き下げていくとか。
 ※この表現は、介護保険などでも使っていますね。

・マイナンバーカードを活用する案だと、消費者はカードを持ち歩かないと軽減算定に反映されません。また、これは毎日新聞等でも指摘されていますが、全ての小売店がカード情報を読み取る設備を導入する必要があります。これでは複数税率経理するよりも負担が大きくなるでしょう。

麻生くん、政治家や財務省が面倒と思うことを避けようとすると、かえって一般国民(事業者を含む)が面倒になってしまうんよ。
面倒なら、大臣も議員も辞めていただいて結構ですが。