醜悪なもの~安保法案への賛否ではなく

「戦争行きたくないは利己的」 自民・武藤氏ツイート炎上

京都新聞 8月3日(月)15時50分配信)

 安全保障関連法案をめぐる学生らの反対集会について、自民党の武藤貴也衆院議員(滋賀4区)が「戦争に行きたくないという考えは極端な利己的考え」と自身のツイッターに書き込んでいたことが3日、分かった。自発的に戦争に行く姿勢を求めたとも受け止められる表現で、ネット上で反論が相次ぎ、野党も批判を始めた。
 武藤議員は先月30日、法案反対を訴える学生らのSEALDs(シールズ)の主張を、「だって戦争に行きたくないじゃん、という自分中心、極端な利己的考えだ」と書き込み、戦後教育が利己的個人主義をまん延させたと結んだ。
 これに対し、ネット上では「自衛隊を戦場に送り込むわけでない、との国会答弁とも矛盾する」などと批判が相次ぎ、民主党枝野幸男幹事長は同日、「自民党の強権的な姿勢が総裁から若手議員まで徹底している」と述べて批判。今後追及する姿勢を示した。
 武藤氏は自身のフェイスブック上で、「世界各国が平和を願って努力する現代において、日本だけがそれに関わらない利己的態度をとり続けることは国家の責任放棄だ」としている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150803-00000036-kyt-l25

いわゆる安保法案については、当ブログでは、あえて触れていませんでしたが(ピタッとくる主張をしている政党がないこともある)、あまりにどうかと思ったので、武藤氏の発言を調べてみました。

武藤氏の該当ツイッター原文
SEALDsという学生集団が自由と民主主義のために行動すると言って、国会前でマイクを持ち演説をしてるが、彼ら彼女らの主張は「だって戦争に行きたくないじゃん」という自分中心、極端な利己的考えに基づく。利己的個人主義がここまで蔓延したのは戦後教育のせいだろうと思うが、非常に残念だ。

で、ツイッターは字数制限があるからフェイスブックを見てください、とのことで見ようとしましたが、私からは見ることができなかったので、とりあえず武藤氏のブログを確認。
http://ameblo.jp/mutou-takaya/entry-12057766363.html

これ、砂川判決の補足意見やら、トルコ航空による日本人の救出の件やらが引用されていましたが、
それと武藤氏の主張とを結びつけるのは無理があるという印象を受けました。

「戦争に行きたくない」という考え方は、自分が死にたくないということだけではなく、他人を殺したくないというおもいを含むことがあります。
それに対する意見もいろいろあるでしょうが、現在の若者(SEALDsに限定することなく)ということでいえば、危険な紛争地でNGOなどで活動している人々は多数います。
(そして、そういう若者が危難に遭えば「自己責任」という大人がいたりもします。)

平和を願う活動というのは、自衛隊で海外に行く以外にも、かれらのようなNGO活動も含まれるでしょう。
そうではなく、「戦争に行きたくない」というのは利己的で許されない、という考え方に立つなら、武藤氏は(首相が否定している)徴兵制を肯定する立場に立っている、とも考えられます。

ついでに調べてみましたが、武藤氏が、たとえば自衛官として海外や被災地で身体を張って活動したとか、青年海外協力隊で汗をかいたとか、そういう情報は見つかりませんでした。

そういうことなら、つまり、武藤氏は、自分自身が安全な国内にいて、
<若者が「戦争に行きたくない」というのは自分中心、極端な利己的考え方に基づく>
と主張しているわけです。

何が醜悪って、自分自身が安全な場所にいて、他人(特に年少者、弱い立場の人々)を危地に追いやることほど醜いことは、なかなかないと思います。

こういう国会議員が生まれてきたということは、やはり戦後教育のせいなのでしょうか?(←これは皮肉です。ちなみに、武藤氏は昭和54年5月生。)