朝方勤務の落とし穴

首相肝いりの「日本版サマータイム」 “女性活用”に思わぬ矛盾

産経新聞6月23日(火)8時5分配信)

 政府は7、8月、出先機関を含めた国家公務員の始業時間を通常より1~2時間早める「朝型勤務」を導入する。退庁時間を早めることで慢性化する長時間労働の是正と民間への“波及”を期待するが、通勤時間が早まれば、子育て世帯は早朝保育の活用を迫られる可能性も。定時に帰れなければ、さらなる残業を招く恐れもあり、母親たちからは「子育て疲労に陥りそう…」といった困惑の声も聞こえてくる。

「生活スタイルを変革する新たな国民運動を政府を挙げて展開する」。安倍晋三首相は3月下旬の閣僚懇談会でそう述べ、夏季期間中の国家公務員の始業時間前倒しを指示した。

 期間中は通常午前8時半~9時半の勤務開始時間を同7時半~8時半に早め、夕方以降の会議を設定しないなど、職場の早めの消灯を実施。早朝出勤した職員の終業時間は午後4時15分~5時15分とするという。

 明るい時間が長い夏は朝早くから働き始め、夕方を家族などと過ごす“オフ時間”に充ててもらうことが狙い。働き方の見直しにつなげ、ワークライフバランスの実現を目指すという。

 これを受け、塩崎恭久厚労相経団連に各企業でも朝型勤務に取り組むよう要請。経団連の担当者は「労働力不足が現実となる今、優秀な人材にとどまってもらうには長時間労働など会社風土の改革が急務。各社の経営陣は相当の危機感を持っている。朝型勤務は働き方を変えるきっかけになるかもしれない」と要請を前向きに受け止める。

 ■時間外勤務が減少したケースも

 こうした朝型勤務の導入はすでに一部企業で始まり、成果を挙げている。

 大手商社の伊藤忠商事は国内の本社、支社、支店勤務の正社員約2600人を対象に午前5時~9時までの間に働いた時間の賃金を高く設定。さらに、午後8時以降の残業を原則禁止(同10時以降は禁止)としている。

 「朝型勤務は社長が発案し、経営陣から社員へとその本気度が伝わった。最初は経営面でマイナスとなることも覚悟していたが、残業が減るなど、働き方改革につながり、予想以上の効果が出た」と同社の広報担当者はいう。昨年5月の運用開始から時間外勤務は、総合職で月約4時間、事務職で同約2時間の削減に成功。時間外手当の支給額は早朝割増を含めて約7%減った。

 朝8時前に始業した社員には、バナナやヨーグルトなどの軽食を無料で振る舞ったり、社内にある託児所の開所を1時間早めたり、といった制度設計上の細かな配慮も奏功したという。

と、ここまでは良い制度のように見える記事です。
「夕方以降の会議を設定しない」など、ある意味当然のことができていなかった(注:会議の後は、さらに仕事が発生しやすい(謎)・・・)のは、こういうことでもないと改善しにくいのかもしれません。

が、ここから問題点が書かれています。

 ■長時間労働につながる?

 一方、始業時間が早まれば対応を迫られる可能性があるのが、子育て世帯とそれを支える保育所だ。

 千葉市にある認定保育所は、入所児童の約3割の親が都心への通勤者で、「早朝預かりが増えれば、午前7時としている開所時間を同6時からに変更しなければならないかもしれない」と男性園長(47)は気をもむ。

 朝6時開所を決定すれば、保育士をさらに増やして対応するつもりだが「どこの保育所でも保育士不足は深刻。人が集まるかどうか…。集まらなければ、今いる人員で対応することになるが、通勤時間に1時間かかる先生もいる。家を出る時間が朝4、5時となる可能性もあり、保育士全体としても長時間労働につながりかねない」(園長)。

 早朝預かりには、追加料金が発生するため、保護者にとっては、さらなる出費につながる可能性もあるという。

 ■子供に“しわよせ”?

 影響が出るのは大人ばかりではない。子供たちも生活リズムが早くなる。「今でも、朝が早い子は朝食を食べず、眠ったまま親に連れられて登園することもある。さらに時間が早まれば、子供たちの健康に影響を及ぼさないか心配だ。親と離れる時間が増えて朝の家族だんらんが削られれば、心の成長にも影を落とすのではないか」と園長は心配する。

 母親たちも困惑する。4歳の子どもを都内の認可保育所に預けて働く団体職員の女性(40)は「始業時間を早めたことで、その分、仕事を早く切り上げられたらいいが、日本の会社は残業がつきもの。早く帰ることができるとは到底思えない」と制度導入には懐疑的だ。

 「朝は早い、帰りも残業で帰れないとなれば、子供たちに無理を強いることになる。私たち親も、子育て疲労を起こしてしまいそうだ」と女性。制度の運用に当たっては、子供たちにしわ寄せがいくことがないよう「働く女性たちの目線も大事にしてほしい」と控えめに注文をつけた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150622-00000531-san-soci


始業時間を早めても「残業がつきもの」・・・という悪しき慣習は廃止するにしても、
早朝シフトによる子どもたちや保育現場への影響というのは避けがたいでしょう。

要介護者がいる家庭では、通所サービスへの送り出しやヘルパーのシフトにも影響が出るかもしれません。

安倍氏は外交感覚はまだマシですが(それも鳩山氏あたりと比べればずっと普通というだけで、怪しげなときも)、子育て世帯や家族介護などについてははっきり言ってセンスがないのだから、しょうもないことを言い出すのは止めた方がいいと思います。