「社福法人の内部留保批判」は賢くない

社会福祉法人内部留保が多いから介護報酬を引き下げるべき」
ということを財務省や「有識者」あたりの賢くない人たち(でなければ、知ってて知らないふりをしている悪賢い人たち)が主張しているみたいなので、この際、基本的な事項の確認です。

社会福祉法人は、株式会社など営利法人とは本質的に異なる仕組み、ルールで会計をしています。
(根拠法や通知は、ごく一部ですが、前記事に掲載しています。)

まず、「利益」が出たとしても、「出資者」に配当はできません。

社会福祉法人の設立には、1千万とか1億とかの現金・預金や、施設の不動産全部とか、とにかく多額の基本財産が必要なのですが、それは基本的に寄付で賄うこととされています。
株式会社などでは、出資者には利益に応じて配当するのが普通ですが、社会福祉法人の「出資者」は、設立時の寄付者だろうが事業立ち上げ後の寄付者だろうが、法人からの配当は1円もありません。

また、社会福祉法人が何らかの理由で解散することになった場合も、寄付は一切戻りません。

そうして作り上げられた基本財産は、処分したり担保に供することが厳しく制限されています。
所轄庁の承認なしに処分できないというのが原則です。
だから、たとえば施設の敷地を担保に入れて一般の銀行から施設建替資金を借りる、ということは、普通はあり得ない、ということになります。

これは所轄庁の承認が得られれば可能、とはいえますが、所轄庁にとっても社会福祉法人の許認可関係の事務は、それほど裁量の余地がありません。
社会福祉法で「法定受託事務」と定められているからです。

基本的には自治事務である介護保険障害福祉サービスでは、都道府県や市区町村が(法令に基づいて、ではありますが)実状を判断して対応することが可能です。国の通知は「技術的助言」に過ぎません。
ですが、社会福祉法人の許認可関係については、国の通知も無視できません。
介護保険などなら無視してよい、というわけではありませんが。)

前記事には掲載していませんが、通知の中には「定款準則」というものが定められており、基本的には、それに沿った形の定款でないと、なかなか所轄庁はウンと言いません。
また、会計基準等についても、別途定められています。

このあたりについて触れ出すと、数限りなく記事立てする必要があるので、ここでは省略しますが、
普通の企業会計から類推して社会福祉法人の経営状態について首をつっこむのは、かなり無理があります。

それで、別の角度から見てみます。
社会福祉法人の創設者、あるいは「雇われ経営者」みたいな役員でも施設長でも、
そういう人々にとって、
財務省などがいう)内部留保」が増えて得られる個人的メリットは、経済的に全くありません。
「出資者」に対しても「配当」がないのですから。
なので、持続的な事業運営のために必要、だから(資金が)計上されている、と考えるのが自然です。

もし、私利私欲に走るのなら、資金使途を誤魔化し、何らかの不正を働く、という方向になるでしょう。

社会福祉法人内部留保が多いから介護報酬を引き下げるべき」
という財務省などの意向を受け、こういう不正に走ろうとしている役員が、すでにいるかもしれません。

だから財務省やその御用教授たる有識者などは賢くない、という言い方もできます。