菅氏には「あざとさ」がない

前記事で小泉内閣などに批判的なことを書きましたが、
今の私は、分類すれば「支持政党なし」ということになります。

この記事も、そういう前提でお読みいただければ幸いです。
もっとも、疑いながら読んでいただいても、別にかまいません。
 
こちらの記事で紹介した本を読む限り、菅直人氏は東電の原発撤退を阻止した大功労者という見方は可能です(異論はあるでしょうが、東電側からの<安価な>反論本が出るまでは、そういう前提にしておきます)。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/31442600.html
 
ただし、東日本大震災全体の対応としてみた場合、私の評価はとても低くなります。
「衆参ねじれ国会で、かつ、党内基盤も弱かった」ということを勘案したとしても、です。

もっとも、あの時点の菅氏の立場で、(口では何と言おうが)非協力的な野党や党内反対者の協力を得ることは、並の政治家なら困難でしょう。

私のように無責任な立場からは、いくつかの方法は考えられますが、

・震災対応のため、マニュフェストはいったん白紙に戻す。
・震災対応に優先して予算を注ぎ込み、残額を(なるべく)マニュフェストの趣旨に合うように精査して使う。
・震災対応に反対する議員は、与野党問わず抵抗勢力であり、被災地が選挙できる状態になり次第、総選挙を行う。

かなり乱暴な表現ですが、たとえば小泉純一郎氏なら、この程度のことぐらい言い出したのではないかと思います。
 
私は、そもそも「公約(マニュフェスト)原理主義」の政治家に不信感を抱いています。

前記事でも触れましたが、ミニ政党なら
「予防給付を介護給付に統合し、効率的かつわかりやすい介護保険制度」
というワンフレーズで訴えるのもアリでしょう。

ですが、政権を争う政党なら、様々な分野の、いわば定食的な公約にならざるを得ません。
政党の支持者でも、その政党の政策の全てに賛成するという有権者はどれぐらいいるでしょうか?
 
ちなみに、私自身の考え方は、
介護保険:要支援者への給付を堅持、予防給付を介護給付に統合
・消費税:伝票方式(インボイス)で、軽減税率
地方交付税による地方自治体間の財政調整:堅持あるいは拡充
原発:安全性を確認した上で当面の再稼働容認、ただしコスト計算等は(原発関係者以外の)独立機関で
・夫婦選択別姓:賛成
・外国人(地方)参政権:反対
・対中韓:対話姿勢は維持、ただし経済関係は他のアジア諸国などにもシフト
・TPP参加:慎重
という感じです。
これらと全て同じ政策の政党はないでしょう。

だから、なるべく近い政党や候補者を選んで「次善の策」で投票するしかないのです。

そういう状況なのに、
「マニュフェストに書いてないことだからできない」(与党)
「マニュフェスト違反だから審議に応じられない」(野党)
などと主張されてもなあ・・・・・・

話を戻して、当時の菅首相が上で書いたような主張で勝負したとしても、勝てたかどうかはわかりません。
ただ、そうでもしないと、震災後の(与野党無責任体制の)手詰まりを打破するのは難しかったし、実際、退陣を余儀なくされました。

今の我が国は、そういう「あざとさ」でもないと、手詰まりを打破できない。
それは非常に残念ですし、困ったことですし、たとえば古代ローマ(共和制でも帝政でも)などと比べて政治家の質がはっきり劣っていることが恥ずかしいことだと思っています。