陸前高田市長の本

被災地の本当の話をしよう~陸前高田市長が綴るあの日とこれから~

(戸羽 太・著)ワニブックスPLUS新書


著者は、東日本大震災による津波で、岩手県の中では最大の被害を受けた陸前高田市の市長です。
配偶者を亡くされた遺族の立場でもあります。

市街地が壊滅した後の陣頭指揮を執りながら、2011年8月に初版発行というスピードには、驚異を覚えるとともに、その裏にあるであろう強い想いを感じます。

憤りを覚える話もあります。

廃墟となった旧市庁舎で(多数の市民や職員が亡くなった場所でもあります)、
Vサインをしながら写真に収まる政治家。
こういう人物を次の選挙で落とすことについては、その選挙区の有権者の判断に任せるしかありませんが。

国に強く要望して、やっと届いたガソリン。
それを救援の自衛隊員が給油しようとした瞬間、別の省庁から出ているガソリンだから自衛隊員にノズルを触らせてはいけない、という「お達し」。

市民の食糧確保のために有休農地で仮設のスーパーマーケットを作ろうとしたら、
農地整備について過去に補助金が出ているので、「転用不可」(どうしてもというなら、補助金返還)。
→さすがに、これは見解が変わって認められたようですが。

進まない瓦礫処理のために、市に瓦礫処理専門のプラントを作ることを県に提案したところ、
手続きが必要なので建設開始までに2年はかかる、という返答。

さらに、取材陣の前でいろいろしゃべりすぎると、
「そういった発言は控えてもらわないと困ります」と飛んでくる県職員。

怒りよりも、むしろ悲しくなります。

なお、たとえば国や岩手県庁に抗議メールを送ってもらうために、本書を紹介したのではありません。
(被災県も仕事は手一杯でしょうし、被災された職員や、身内が犠牲になった方があるかもしれません。)

どうすれば、このような平時の「杓子定規」対応ではなく、必要な緊急対応が行えるようになるか。

いろいろな角度から考えていかなければならないと、私は思いました。