中国出土の頭蓋骨、人類進化の時系列塗り替える可能性 科学者らが指摘
CNN.co.jp 9/26(金) 18:47配信
(CNN) 数十年前に中国中部の川の土手から出土した損傷の激しい頭蓋骨が、人類進化の系統樹を揺るがしている。新たな分析で明らかになった。
押しつぶされた状態のこの頭蓋骨は、デジタル技術を駆使した科学者によって復元された。年代は100万年前とみられ、複数の特徴からドラゴンマン(竜人)及びデニソワ人と呼ばれる人類と同系統に属することが示唆される。デニソワ人は最近発見された先史時代の謎の人類で、その起源はよく分かっていない。頭蓋骨の年代と、デニソワ人の初期祖先とされるその分類は、このグループの起源が従来の想定よりも格段に古かったことを意味する。
復元した標本と他の100以上の頭蓋骨を基に、研究者らはより広範な分析を行い、これまでと相当異なる人類進化の構図を描き出した。その内容は25日付のサイエンス誌上で報告されている。研究結果は、我々ホモ・サピエンスやネアンデルタール人にとっての年代の時系列に著しい変化をもたらす。ネアンデルタール人は欧州と中央アジアに暮らしていた太古の人類で、約4万年前に姿を消した。前出のデニソワ人と共存し、異種交配していたことが知られている。
論文共著者で英ロンドン自然史博物館の古人類学者、クリス・ストリンガー氏は今回の研究について、100万年前の時点で我々の祖先が既に異なるグループに分かれていたことを示唆すると指摘。従来の想定より格段に早く、より複雑な人類進化の枝分かれがその年代で起きていたとの見方を示した。
今回の発見が幅広く受け入れられれば、ホモ・サピエンスの出現は40万年早まり、人類の起源にまつわる知見が劇的に変化するとみられる。
当該の頭蓋骨は部分的に鉱物化した2点の標本の1点。これらは1989年と90年に中国中部、湖北省の十堰市にある鄖陽区で発掘された。三つ目の頭蓋骨がその近くで2022年に見つかったが、ストリンガー氏によれば現時点で科学文献に公式の記載はない。
鄖陽区で発掘した頭蓋骨はどちらも地下に埋もれていた数千年の間に変形していたが、「鄖県人(うんけんじん)2号頭骨」と命名された2点目は保存状態が比較的良かった。新たな復元作業はこの標本を基に行われた。最先端のCTスキャンやライトイメージング、仮想技術を用いて骨を周囲の岩石基質から分離し、歪みを修正した。
発掘時の堆積層の年代などによって割り出した頭蓋骨の年代から、一部の専門家はそれをホモ・エレクトスのものだと考えた。ホモ・エレクトスはより原始的なヒト科の一種であり、その時点で世界の多くの地域で暮らしていたことが分かっている。
しかし鄖県人2号頭骨には、平らで浅い頬骨(きょうこつ)など、ホモ・エレクトスと異なる特徴も見られる。
ストリンガー氏と同僚らは、鄖県人2号頭骨をドラゴンマンの初期の祖先に属すると結論づけた。学術名を「ホモ・ロンギ」というドラゴンマンは、中国北東部の井戸の底で見つかった頭蓋骨を21年に科学者らが特定。今年6月には太古のDNAを通じてホモ・ロンギをデニソワ人と関連付けることにも成功していた。
ストリンガー氏は、三つ目の鄖県人頭骨を詳細に調べれば復元の正確さを検証できると共に、当該の種を人類の系統樹のどこに組み入れるかを見極めることも可能になるとしている。
今回の分析は、ホモ・サピエンス、デニソワ人、ネアンデルタール人の起源がこれまでの考えよりもずっと古いことを示唆する。
太古のDNA研究に基づく伝統的な見方では、上記3種は50万~70万年前に共通の祖先から枝分かれを始めたとしている。ただこの祖先に該当する種に関しては全く明らかになっていない。
新たな分析によれば、現生人類とデニソワ人が最後に共通の祖先を持ったのは約132万年前。ネアンデルタール人の進化系統からの枝分かれはさらに早く、約138万年前だという。この結果はデニソワ人の方がネアンデルタール人よりも我々現生人類に近い種だということを意味する。従来はネアンデルタール人がホモ・サピエンスに最も近い姉妹種だと多くの人が考えていたと、研究者らは指摘している。
米国立自然史博物館の古人類学者、ライアン・マクレー氏は頭蓋骨の復元に関して肯定的な見方を示し、それがホモ・ロンギとデニソワ人に適合することにも同意した。同氏は今回の研究に携わっていない。
ただ系統樹の分析についてはそこまで納得しておらず、今回のチームは「限られたデータの中で一度に多くのことを行おうとしすぎたかもしれない」と語った。具体的にはホモ・サピエンス、デニソワ人(ホモ・ロンギ)、ネアンデルタール人の起源について、従来より2倍ほども古い年代を挙げた点に言及した。
その上で、現時点でより安全なのは、ホモ・ロンギ及びデニソワ人のグループの方がネアンデルタール人に比べてホモ・サピエンスに近そうだと指摘することだとの認識を示した。
ストリンガー氏は、研究結果に対して懐疑的な見方が出ることは予想していたとし、今後は分析の範囲を広げる計画だと述べた。さらなるデータや化石を盛り込みながら、研究の精度を高める考えだという。 分析の対象として、アフリカで発掘した化石を増やす意向も明らかにした。
https://news.yahoo.co.jp/articles/3775da8d263163cddcae4c9d867c61723d470041
先週の金曜のニュースですが、ちょっと凄いことになった、と思いました。事実なら。
いや、事実とされているのでしょうが、出土地が中国というだけで、つい「捏造」などという言葉の可能性を気にしてしまう私の心が汚れているのでしょう。
ノーベル賞がらみで「ネアンデルタール人との交雑」という記事を書いた頃は、デニソワ人について謎が多く、
https://jukeizukoubou.hatenablog.com/entry/2022/10/11/220129
「台湾にもデニソワ人の化石」という発見が報道されると、ワクワクしました。
https://jukeizukoubou.hatenablog.com/entry/2025/04/11/211518
その頃は、デニソワ人は、どちらかといえばホモ・サピエンスよりもネアンデルタール人(これも、デニソワさんに比べればマシとはいえ、わかっていないことが多い)に近いというイメージがありました(個人的に、かもしれない)。
でも、今回の分析では、デニソワさんは、ネアンデルタールさんよりもサピエンスさんに近い、ということ。
ただし、この3者が分岐した年代が、以前の想定よりもかなり古くなるということ。
図(この図も素人作業というだけでなく、手抜きでいろいろ省略している部分もあります。ホモ属内の系統とか、亜種とみるかとか、いろいろあり過ぎ)に書き込んでみると(茶色の部分です)、ちょっと分岐が古すぎるかな、と素人ですが、思います。
相互に交雑して、その間の子がさらに子孫を残して、私たち現生人類(アフリカから出たことのある集団に限る)のDNAの何パーセントかに痕跡が残っているというのだから。
でも、ワクワクしますよね。
