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こうして不便・不都合が解消されると、次には「旧氏の併記は嫌だ」とか「アイデンティティーが喪失される」などの問題が言われ始めた。ゴールポストが動かされたということだ。
しかし、アイデンティティーは優れて内心の問題であり、主観的で千差万別でもあり、例えば、妻のアイデンティティーを主張するのであれば、夫のアイデンティティーもあり、子供のアイデンティティーもあり、家族のアイデンティティーもあるということになる。
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→なるほど、昭和63年に訴えた国立図書館情報大の女性教授は、旧氏使用という和解案で妥協したかもしれません。
しかしながら、その頃はまだ社会に出ていなかった女性、あるいは平成以降に生まれた女性たちが、生まれた時代、育った時代の価値観の中で不平等さを感じ、より本質的な主張をしたとしても当然のこと。海外で仕事をしたり、国際的に論文を発表する女性も増えているでしょう。それを(アジアの某国の所業のように)「ゴールポストが動かされた」などと評するのは、フェアとは思えません。
さて、「夫のアイデンティティ」とは何でしょうか。妻が同氏でないと、夫のアイデンティティは維持できない、そんな弱っちい男が日本に普通にいるのでしょうか。(現行の制度で)妻の側の氏を名乗るのは嫌だ、という程度のなら、まだわかりますが。
「子供のアイデンティティ」については、「夫の」よりは、まだ理解できます。ただ、親子で別氏というのは、現在でもあり得ます(事実婚、離婚時の氏の選択結果、両親のどちらかが外国籍など)。これらの場合に、子の側から「アイデンティティ」云々というような話は、家裁を含む裁判事例でも、児童相談所や福祉事務所のケース実例、研究紀要等でも、私は見たことがありません。「家族のアイデンティティ」は、事実婚家庭でも、母系三世代家族(「サザエさん」「コボちゃん」のような夫の氏を称する核家族+母方祖父母の同居世帯)でも、普通に維持されていますよね。
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その点、平成27年12月の最高裁判決は「婚姻の際に『氏の変更を強制されない自由』が憲法上の権利として保障される人格権の一内容であるとはいえない」とし、「婚姻前に築いた個人の信用、評価、名誉感情等を婚姻後も維持する利益等は、憲法上の権利として保障される人格権の一内容であるとまではいえない」と述べている。アイデンティティー喪失と称する問題までは完全には救済できないということだ。
それゆえ最高裁判決は「不利益は…氏の通称使用が広まることにより一定程度緩和され得る」としたのであった。
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→最高裁判決結果だけではなく、補足意見や、特に女性裁判官の意見なども熟読すべきですよ、八木君。総合的に合憲となっても、少なくない反対意見(特に女性判事)などが提示されたことは重く受け止めなくては。
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(以下、元ネタは平成27年の最高裁判決での報道・TBS系12月16日配信←これ自体はリンク切れ)
寺田逸郎裁判長はみずからの考えを補足意見として示し、夫婦別姓の裁判について、「司法の場での審査の限界を超えており、民主主義的なプロセスにゆだねることがふさわしい解決だ」として、国会で議論されるべきだという考えを重ねて示しました。
最高裁判所の裁判官15人のうち、女性裁判官全員を含む5人が「婚姻の自由を保障した憲法に違反する」という意見を示しました。
最高裁判所の岡部喜代子裁判官、櫻井龍子裁判官、それに鬼丸かおる裁判官の女性3人は、連名で意見を出しました。
この中で「女性の社会進出は著しく進み、結婚前の名字を使う合理性や必要性が増している。96%もの夫婦が夫の名字を名乗る現状は、女性の社会的、経済的な立場の弱さなどからもたらされている。妻の意思で夫の名字を選んだとしても、その決定過程には、現実の不平等と力関係が作用している」と指摘しました。
そのうえで、「多くの場合、女性のみが自己喪失感などの負担を負うことになり、両性の平等に立脚しているとはいえない。今の制度は結婚の成立に不合理な要件を課し、婚姻の自由を制約する」として、憲法違反だと結論づけました。
また、木内道祥裁判官も、「同じ名字でなければ夫婦が破綻しやすいとか、子どもの成育がうまくいかなくなるという考えは根拠がない」などとして憲法違反だと判断しました。
さらに山浦善樹裁判官は、憲法違反だとしたうえで、「平成8年に、法制審議会が夫婦別姓を認める民法の改正案を出したのに、今も制度を変えていないのは、国会が立法措置を怠っているということだ」として、国に賠償も命じるべきだという反対意見を述べました。
https://jukeizukoubou.blog.fc2.com/blog-entry-2016.html
<参考>「夫婦同姓は合憲」判決
2015.12 違憲5(女3、男2)vs合憲10(男10)
2021.6 違憲4(女1、男3)vs合憲11(女1(補足意見あり)男10
女性判事の違憲率75%(3/4) 男性判事の違憲率19.2%(5/26)
(つづく)