「なるべく客観的に兵庫県知事選について考える」シリーズ?の続きです。
5 政策的な違い
このシリーズの最初の記事(https://jukeizukoubou.hatenablog.com/entry/2024/10/24/211639)で、
「県政の改革ということ自体については、どの出席者も否定していなかったと思います。」
と書きました。
違いがあるように思ったのは、「2024年兵庫県知事選挙 立候補予定者討論会」(https://www.youtube.com/watch?v=t_PEO7HXlYk)を見たところでは、
・「県立大無償化」は継続? 見直し?
・県庁舎 建て替え計画は?
というあたりでしょうか。
このうち、県立大無償化については、日本ファクトチェックセンターが発掘してきた斎藤氏の前回立候補時の公約のアーカイブでは、見つけられませんでした。
県庁舎関係については、以下のとおり記載されていました。
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〇 県本庁舎は、テレワークの浸透などポストコロナ社会の働き方に合ったものとなるよう、現在の再整備基本構想を見直します。また、人や企業が集まり、地域の発展につながる県庁周辺一帯の再整備計画を公民連携により立案、推進します。
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県立大無償化については、今回の立候補予定者討論会の出席者の何人かを含めて、次のような批判意見あるいは疑問の提示があります。
・県内から大学への進学者のうち、恩恵を受けるのは、県が設置者である県立2大学(兵庫県立大学、芸術文化観光専門職大学)に限られる。
・県費を投入するなら、もっと広い対象にすべきではないか(その場合、授業料全額無償ではなく、広く浅くという可能性はあると思います)。
これに対して、討論会での斎藤氏の主張は、本来は国が無償化とすべきだが、とりあえず県が設置している大学で実施し、国に働きかける、というようなものだったと思います(詳細な文言は違う可能性があります)。
個人的には、どちらの考え方も理屈は成り立つと思います。
ただ、兵庫県がその設置大学で(あるいは大阪府が大阪公立大で)無償化を実現したとしても、国が動くとは限りません(国の財政状況等から、私はあまり楽観的にはなれません)。
だから、限られた兵庫県の財源を、その設置大学に集中してアピールするか、それとも県出身大学生に浅く広く支給するか、というのは難しい選択だと思いますが、後者の方が現実的なように思います。
(なお、無償化を見直す場合でも、現在の在学生や受験生には影響を及ぼさないように、ということを稲村氏などが主張していたと思います。)
さて、県庁舎については、斎藤氏の今回の公約(10月23日発表)の中に、次のようにあります。
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県庁舎の前建替計画を凍結、新たなビジネス環境に相応しいスリムな県庁へ
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討論会では、「4割出勤ありきではない」と斎藤氏は発言していましたが、かなりの割合の職員を在宅勤務させる、という方針は間違いないようです。
個人的意見としては、私はこれは問題が大きいと思います。
阪神・淡路大震災でも、その後の大災害でも、被災直後はライフラインが大きな影響を受けました。
(というか、「ライフライン」という言葉を聞くようになったのは、阪神・淡路大震災からだったように思います。)
県庁舎や、たとえば災害待機用の職員住宅なら、非常電源や衛星通信などを使った通信機能等が考慮されているでしょう。
職員の一般の住居では、それは無理です。
停電で、固定電話も携帯電話も通じない、インターネット用の回線もつながらない、そういう環境で、オンライン勤務などできるわけがありません。
斎藤氏は神戸市の出身ですが、1995年には県外(愛媛県)の高校在学中で、震災直後の状況は直接体験していなかったのではないでしょうか。
東日本大震災のあとは、飯舘村や宮城県庁に派遣されていたとのことですが、直後(平成23年=2011年)のことではなかったはずです。
たとえば稲村氏が神戸大学の学生として、震災ボランティアの経験があるのに比べると、大災害を実感としてとらえられていないように思われます(これは私の主観ですが)。
この建替え計画(の見直し等)については検討会で協議されていると思いますが、斎藤氏が公約に掲げるような「スリム化」は、危険性が高いように思います。
大学無償化はともかく、この件については、もし再選された場合でも、柔軟に見直しされることをお勧めします。
県民、県職員、そしてその時点の知事自身の安全のためにも。
これで予定していた範囲については、ほぼ触れてきたつもりです。
ただ、今回の記事を書くに際して新たに気がついたことがあったので、追加します(これも、やや主観的かもしれません)。
10月23日発表の斎藤氏の公約に、実績として
「知事の給料・期末手当を3割、退職手当を5割カット」
と書かれています。
実績には違いないと思いますが、百条委員会が実施した職員アンケートの中に、
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秘書課の知事秘書担当の定数はどんどん増えている。齋藤知事着任当初、知事秘書の部屋にいた職員は前知事時代とほぼ同数の8人(室長、課長含む)だったが、現在は16人ほど。前知事時代にはあり得ない体制で、いかに齋藤知事の注文が多く手間がかかるのかを表している。
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https://jukeizukoubou.hatenablog.com/entry/2024/09/27/210402
というものがあります(長いので一部抜粋)。
知事の給料等を減らしても、一般職員を8人も増やせば、たとえ本俸の少ない若手だったとしても、かえって費用が増えるはずです。
上記のアンケートは、(無記名 C:人づてに聞いた)というカテゴリーではありますが、調べたら秘書課の増員の有無ぐらいは簡単にわかるはずなので、虚偽とは考えにくいです。
もし、思い当たる節があるようでしたら、「実績」を訂正しておいた方がよろしいかと思います。