「なるべく客観的に兵庫県知事選について考える」シリーズ?の続きです。
2 兵庫県の決算
前記事で、兵庫県知事選立候補予定者(出席しなかった1名を除く)の中で「井戸県政時代に戻したい」という人はなく、改革の必要性は否定されていない、と書きました。
なぜ、そうなったか、ということについて考えてみます。
具体的には、兵庫県ウェブサイトの「決算の概要」から、財政状況を見ながら考えていきます。
https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk20/pa02_000000040.html
令和2年度(2020年度)から5年度(2023年度)にかけての決算資料から抜き出しました。
斎藤元彦氏が知事に就任したのは令和3年8月のことで、彼が年度を通して知事であったのは令和4年度から、ということになります。
この期間はコロナ禍で、歳入も歳出も国からの特別な交付金や経費があり、比較が難しいところはあります。
また、たとえば令和3年度決算の資料には、
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普通交付税の減額精算(※1)や、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金活用事業等の実績減に対する国庫返納金など、後年度に183億66百万円の精算が生じる見込
※1 地方交付税における基準財政収入額の算定における一部の税目が、実際の税収に比べて過小と なった場合、その差額の75%(一部100%)が、翌年度から3年間の地方交付税で精算
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というような注釈があり、よけいにわかりにくくなっています。
ここでは、なるべく概要がわかりやすいように、「単年度収支 F」から下は、精算分を除いた(たぶん実質の)金額を記載しています。
表の下の方に、実質公債比率、将来負担比率、経常収支比率とありますが、簡単にいうと低い方が望ましい数値で、兵庫県の場合、少なくともあまり安心できる数値ではありません。
(まあ、全国的にも、財政が厳しい自治体の方が多いのですが。)
原因はいろいろありますが、阪神・淡路大震災の影響が大きいのは事実で、歴代の貝原・井戸県政だけの責任とも言い難いところはありますが、その点については別に述べる予定です(できるかな?)。
ともかく、厳しい中で、令和5年には財政基金(不測の事態に備える貯金ともヘソクリとも)が百億円超(12,716百万円)の残高になるよう積み増すことができた、というのが斎藤県政の実績のひとつ、とも主張されています。
それは嘘ではない。
ただ、歳入や歳出の内訳を見ていくと。
歳入では、県税収入の伸びが大きいです。
令和2年度あたりのコロナ禍での落ち込みから見ると、個人県民税も法人関係税(法人県民税や法人事業税)も伸びているし、直近では減少している地方消費税も、令和2年度よりはマシになっています。
歳出では、令和5年度に退職手当が大きく減少しています。
「定年引き上げによる退職者数の減少に伴い、退職手当の減による」と決算資料にはあります。
それまでは、60歳になった年度末に定年退職金を支給して、その上で再任用(最長65歳)だったのが、「本当の退職」のときまで払わなくてよくなった、ということかと。、
つまり、井戸県政末期の「コロナ禍不況」から脱したこと、退職金を支給する時期がずれたこと、などが大きくて、基金を積む余裕が増えた。
もちろん、斎藤氏ならではの改革が影響した可能性もあるでしょう。
ただ、斎藤氏の努力だけで基金が増えた、というのは正確ではないでしょう。
ところで、65歳の年度末まで退職手当支給時期が延びたとしても、結局は払わなければなりません。
そのときは、逆に財政負担が大きくならない?
あれ、地方公務員は、民間の引当金みたいな制度はどうだったっけ?
ややこしくて話がそれそうなので、次に行きます、たぶん。