体験者15人を被爆者に認定 「黒い雨」有無で地域に線引き 長崎地裁判決、29人は敗訴
長崎新聞 9/10(火) 10:19配信
長崎原爆に遭いながらも国が定める地域の外にいたとして被爆者と認められていない「被爆体験者」44人(うち4人死去)が、長崎県と長崎市に被爆者健康手帳の交付などを求めた訴訟の判決で、長崎地裁(松永晋介裁判長)は9日、東長崎地区で原爆投下後の放射性降下物「黒い雨」に遭ったと判断した15人(うち2人死去)を被爆者と認定し、県と市に手帳交付を命じた。それ以外の地域にいた29人の請求は退けた。
国の援護区域外で広島原爆の「黒い雨」に遭った原告84人全員を被爆者と認めた広島高裁判決が2021年に確定した後、同様の放射性降下物による健康被害を訴えた体験者の救済を巡る初の司法判断。先月には岸田文雄首相が被爆体験者の課題解決に向けた調整を進めると発言しており、国の対応が注目される。
主な争点となった被爆者援護法1条3号「身体に原爆放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」(3号被爆者)の解釈について、松永裁判長は「放射線による健康被害の可能性がある事情の下にあった者」とした。
その上で東長崎の旧矢上村・旧古賀村・旧戸石村の3地区について、県と長崎市が実施した1999年度証言調査の結果などから「降雨体験の記述が比較的多い」などとして、「黒い雨が降った事実が認められる」と判断。21年の広島高裁判決を受け、被爆者認定の新基準が22年度から広島に限って運用されているが、東長崎3地区にいた原告15人はがんなどの11疾病も発症しており、広島同様に被爆者認定すべきだとした。
一方、原告側は米国の原爆調査団が戦後に放射線量を測定したデータなどを基に、3地区以外にも雨や灰などの放射性降下物があったと主張していたが、長崎地裁は測定精度が劣るなどとして「降下物の有無を判断できない」とし、東長崎3地区と判断を分けた。
原告は原爆投下当時の長崎市周辺(爆心地から半径12キロ圏内)で原爆に遭った78~91歳。体験者は手帳交付を求めて07年以降、第1陣と2陣が提訴したが19年までに最高裁で敗訴が確定。原告の一部が18年以降、長崎地裁に再提訴していた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/0dab44208c8afe0c905733c5f0d07ba8f4a4d7c2
長崎市のウェブサイトにあった「長崎被爆地域図」を加工してみました。
黒実線で囲んだ地域が認められてきましたが、明るい緑色の地域(わかりにくいですが黒点線で隣接地域と区分した地域)が、今回の地裁判決で「手帳交付を命じた」範囲です。
この原爆投下時、南西寄りの風が吹いていて、爆心地から見て東側の地域にも影響があった、というのも判決理由のひとつのようです(他メディア)。
しかし、こんなに旧市町村単位で区分できるものなのかな?
「黒い雨」にしても、行政の境界には関係なく降るでしょうに。
実は、この図に地形図を重ねようとして、断念しました。山がちなところが多すぎて。
長崎市周辺は山が多く、たとえば旧市町村が高い山脈で隔てられていれば、放射性物質を含んだ大気や雲、雨が(旧市町村内に)とどまった、ということもありそうなのですが・・・
どうも、そういう理由付けは難しそうです。
市町村は、地形だけでは区分されていないので。
旧厚生省が定めた、そして今回の判決が認めたエリアの外にも放射性物質が相当程度流れた、と考える方が合理的なように感じました。
認められたエリア内なら「被爆者」として認定される蓋然性が高い、というのは事実だろうと思いますが、「他はダメよ」と断定するのは、やはり難しそうな。
少なくとも認定されなかった地域の原告は控訴するようなので、高裁以降の判決にも注目です。