本日8月3日の読売新聞の「五郎ワールド」で、駒澤大学名誉教授・西修氏の「憲法一代記」が紹介されていました。
**********
日本国憲法はどのようにしてつくられたのか。その成立過程を知るため、連合国軍総司令部(GHQ)で原案を作成した8人を含む47人にインタビューした。
(略)
とりわけ9条と「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」という66条2項との密接不可分の関係を解き明かしたのは西さんの一番の功績だろう。(略)
文民とは「非軍人」のことである。9条で軍隊が持てないということであれば何も文民条項を入れる必要がない。入れたということは軍人、軍隊の存在を前提にしたからだ。しかも文民条項を明記するよう要求したのは、占領軍の最高意思決定機関である極東委員会だった。
なかでもソ連代表は「芦田修正」の意味を見抜き、文民条項の導入を強く主張した。軍隊の保持が可能になり、軍人が大臣になることを恐れたのだ。さらに中国代表は、戦争目的や国際紛争解決のための軍事力行使以外の目的であれば軍隊の保持は認められることは世界の常識であるとまで明言した。
ここに至ってもはや明らかだろう。憲法の成立過程を検証すれば、9条のもとでも自衛のための軍隊を持つことは可能なのである。西さんは長年にわたって9条と文民条項が密接不可分の関係にあることを主張してきた。しかし、憲法学会で顧みられることはなかった。
**********
同紙・特別編集委員の橋本五郎氏が十分に説明しているとは思いますが、一応補足。
**********
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 <前項の目的を達するため、>陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
**********
わかりやすくいえば、
<前項の目的を達するため、>
の追加です(他の文言も多少は変っています)。
なお、この時点の「中国代表」は中華民国の国民党政権です。
「憲法学会で顧みられることはなかった」とありますが、実際、「自衛隊は憲法違反」という憲法学者は相当数存在するようです。
ふ~ん。
まあ。「ソ連や中華民国が合憲というから自衛隊は合憲」というものではありませんし、そもそも私は自衛隊が憲法違反ではないという考え方に(疑いもなく)立ちますが、そのことを明確にするために改憲すべきだ、という意見が国民の大多数であれば、それに反対するものでもありません。
<参考>日本国憲法の改正試案
https://jukeizukoubou.blog.fc2.com/blog-entry-2514.html
ただ、ソ連代表を含め、当時の諸外国がどのように考えていたかを認識しておくことは、今後の憲法論議のためにも無駄なことではないだろうと思います。