遠くの親戚より近くの他人?

参議院議員鈴木宗男氏の7月11日のブログより。

 

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 インドのモディ首相が9日、プーチン大統領と会談し、ウクライナ問題で「対話で解決すべきだ」と話している。グローバルサウスの代表であるインドは今、世界に存在感を示している。
 昨年、インドはG20(主要20カ国地域)首脳会合の議長国で、日本はG7(先進7か国)の議長国だった。
 岸田総理に、日本とインドがしっかりスクラムを組んで、一にも二にも停戦に向け取り組むよう進言したが、動いた形跡はなく、アメリカに引きずられる対応であった。
 岸田総理は昨日、アメリカでNATO北大西洋条約機構)首脳会議に出席するため出発したが、日本の立ち位置を示してほしいものである。
 地政学的に見て、NATOより日本にとって、ロシア、中国、韓国、北朝鮮、隣国外交が重要ではないか。
まさに、「遠くの親戚より近くの他人」の重みを考えるべきである。「岸田総理ここにあり」と停戦に向けての発言を期待してやまない。
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まず、モディ氏の訪露は、「だまされてロシア軍に入れられたインド人を返せ」という要求が大きな目的だということ
https://jukeizukoubou.hatenablog.com/entry/2024/07/10/212255

 

これを認めなきゃね、鈴木君。
ロシア軍は兵の確保に苦労してるんだから。

 

さて、「遠くの親戚より近くの他人」
鈴木氏がしばしば使っている言葉ですが、
これが成り立つのは、「近くの他人」が善人か、少なくとも普通の人であることが条件。

日本の隣国などのうち、フィリピン、ベトナムなど、アセアン諸国はいいでしょう。
中国から便宜の供与を受けている国が、南シナ海で中国の被害を受けている国と分断されているキライもありますが、対日友好という点では(軍事クーデターから内戦中のミャンマーは別にして)ほぼ問題ありません。

台湾は、尖閣諸島についての見解はともかく、少なくとも武力で日本領土を侵そうとすることはないと考えられるので、大災害時の助け合いなど、友好を深めていくことに異存はありません。

鈴木氏が挙げた諸国のうち、韓国とは竹島を巡る問題があります。
左派政権のときには、自衛隊機へのレーダー照射問題なども起きました。
現政権では多少なりとも改善しましたので、対北などで可能な協力は進めるべきでしょう。
が、政権交代で「ゴールが動く」ということも過去にはありましたから、その点についての注意は必要です。

中国は、尖閣諸島近辺での違法な公船行動以外に、沖ノ鳥島北方の日本に権利のある大陸棚の海域にブイを投入するなど、隙あらば日本の領域・EEZ・権益をかすめ取ろうとする動きが露骨になってきました。
福島の処理水に対する非科学的な反応も改善の兆しが見えません。
明確な証拠の提示なく日本人が拘束されたり拘禁刑になったりというのもありました。

北朝鮮は、核やミサイルなどの国連決議の件以外に、拉致問題という、おそらく歴代内閣でも最大級の(はずの)問題があります。

そしてロシア。
旧ソ連時代にも、内地に引き揚げようとする日本女性(少女を含む)に性加害をしたり、日本兵のシベリア抑留(シベリアだけじゃなく中央アジアウクライナなどソ連じゅうで強制労働)という「前科」がありましたが、今回のウクライナでも、強盗・殺人・レイプ(少女・幼女含む)・児童誘拐・原発占拠・ダム破壊など、戦争犯罪の限りを尽くしています。
さらに、アイヌの人々を口実に、メドベージェフ氏が「北海道はロシアに権利がある」云々の発言をしたこともありました。冗談じゃない、欲しがるのなら、鈴木宗男氏の住居ぐらいにしてくれ。

 

つまり、日本の近所には、強盗殺人レイプ誘拐など、さまざまな犯罪者、あるいはその疑いのある予備軍などが住んでいるということ。
それらの「隣人」に、犯罪を犯す気を起こさせない工夫(防衛力や外交力など)が必要です。
「近くの犯罪者より遠くの友人(あるいはマトモな知人)」です。

なお、グアム(米国の準州)は、東京都島嶼部の隣人といってよく、アラスカのアリューシャン列島も存外、日本に近い位置にあります。
NATO諸国は遠いように思えますが、遠交近攻(これは、古代に、当時の頼りになる隣国・中国より学んだ言葉ですが)の観点からは、アブナイ大国を間に挟んだ位置関係では有効な関係です。

もちろん、日本から(おそらくNATOからも)アブナイ大国を攻めたりはしませんが、アブナイ大国がどちらかの側を侵略しようとする際には牽制となるでしょう。
その有効性は、(もし鈴木宗男氏がロシア側の意向で、日本とNATOとの関係を抑制しようとするのなら)今回の鈴木氏の主張自体が、その証拠となるのかもしれません。ロシアは嫌なんですよね?

 

ところで、鈴木氏も評価しているはず安倍外交ですが、今回のようなNATOとの連携は、まさに「地球儀を俯瞰する外交」ですよね?

「ロシアのウクライナ侵攻でそもそも交渉できる環境ではなくなった。責任は日本ではなくロシアにある」と、安倍氏が指摘していたことも、鈴木氏は無視していませんか?
https://jukeizukoubou.hatenablog.com/entry/2024/06/08/161121