将棋の叡王戦のことが気になっていました。
藤井聡太叡王(当時、八冠王)から挑戦者の伊藤匠七段がタイトル奪取した、叡王戦五番勝負の最終局です。
上図は、2対2のフルセットで迎えた叡王戦第5局。
先手(藤井聡太叡王)が、6四にあった角を7三に成ったところ。
後手(挑戦者・伊藤匠七段)が放置すれば、▲6四金、△同銀、▲同馬、までの詰み。
後手は、△5二銀と引き、玉の逃げ道を開けました。
以下、▲7二馬(王手飛車)、△4三玉、▲8一馬、と進み、後手は玉を安全地帯に逃がし、飛車が取られることを甘受しました(下図)。
(▲7二馬に対して、△6三角なら飛車のタダ取られは防げそうに見えますが、▲8一馬、△同角、▲8四飛で王手角取り。)
もっとも、上図の局面までの手順で、先手の飛車は後手に渡っており、丸々飛車損というわけではありません。
金桂交換ぐらいで先手が少し得、という感じですが、玉の危険度が全然違い、AIの評価値は、もちろん先手が優勢。
ですが、手番を得た後手は、△7六歩、▲6六銀、△8六歩、と突き出し、そのたびに先手は(AIが示す)最善手以外の手を指し、徐々に差が縮まっていったようです。
と金をじっと寄るような手もありました。
先手の直接的な敗着は、王手飛車(▲7二馬)から30手ぐらい先の手とされたようですが、実は「AIが最善とする手」(藤井叡王が選択しなかった手)も難しかったとする見方もあります。
たしかにその直後の評価値は高かったのですが、それでも後手が延々と攻め続け、先手が一手でも間違えれば後手が優勢か勝勢になるというような。
いずれにせよ、逆転の源流は、この上図からの「王手飛車の間に後手玉が逃げる」という手順にあったような気がします。
藤井叡王が間違えた、不調だ、というのではなく、伊藤七段が凄かった、のだろうと、(若い頃の全盛期?はともかく)いまやアマ初段あるかないかというレベルの私は思いました。