チャッスー対ゆりた

前記事のとおり、日本ミックスダブルスカーリング選手権大会は、松村千秋・谷田康真チームが優勝しました。


けさの読売新聞には、おおよそ22.5cm×19.5cmぐらいの大きさの記事が載っていました。
優勝ペアが手を取り合っている写真付きで。

念のためにつけ加えると、(人気の)ロコ・ソラーレ同士の3位決定戦の方が大きく書かれているということもなく、準優勝の小穴・青木チーム(ほぼ小穴選手のことではありましたが)についての記事もあり、よかったと思います。
五輪シーズンでもない時期に、ミックスダブルスカーリングについて、これだけまともな記事が大きく掲載されるなんて。

 

さて、大会の中から、印象に残ったゲームを見てみます。

準決勝の、松村・谷田(チャッスー)vs吉田・松村(ゆりた) です。

なお、「松村兄妹対決」と一部メディアには書かれていましたが、「ゆりた」の方も義理の兄妹チームではあります(吉田姉妹は、松村雄太選手の配偶者、知那美選手、夕梨花選手の順)。

      1 2 3 4 5 6 7 8 EE 計
松村・谷田 2 0 1 0 0 1 1 1 1  7
吉田・松村 0 4 0 1 1 0 0 0 0  6

松村・谷田は、今大会、「強化委員会推薦枠」以上のチームとの対戦では、常に接戦(というか、予選の吉田・清水戦を含めて全て1点差)でした。
この準決勝も、第2エンドで4点取られ、最大3点のビハインドから、1点ずつ返していくという我慢の展開でした。

 

上図は第8エンド、後攻の吉田・松村チーム(黄)の最終投を残すのみという場面でしたが、ここで吉田夕梨花選手は(もちろん松村雄太選手と相談のうえ)まともに投げずに1点スチールを甘受しました。
赤のNo.1ストーンを動かすことは難しく、無理すると(黄のNo.2に触れて)2点以上を失う恐れがある、という判断だったようです。
同点に追いつかれても、エクストラエンド(延長)では有利な後攻を持てる、ということが大きかったでしょう。

 

で、運命のエクストラエンド。下図は、松村千秋選手の最終投がハウス中心付近でNo.1ストーンになったところ。

 

吉田夕梨花選手の最終投は、松村雄太選手がスイーパーとして追っかけながら(背後の夕梨花選手の声は「ウォー」と「イエス」を切り替えながら)、赤のNo.1に正面から当たり、その赤は下側の黄を弾き出して、白の中心円とその外側の青との境界付近にとどまりました。シューター(夕梨花選手が投げた石)は、当たった位置のままに。
赤がNo.1のままです。

 

この瞬間、解説音声のないネット配信の背後で、どよめきともため息とも歓声ともつかない声が湧きました。
無観客試合の大会ですから、他チームの選手やコーチ、運営関係者しかいないはずですが、大勢の観客が見守っていたかのような錯覚を起こしました。

理屈でいえば、6時方向にあった黄色がバックガードになって赤を守った、ということ。
黄のシューターが正面からではなく少しずれて当たればどうだっただろうか、などと思わないでもありません。
たとえば4人制で、ハウス内から藤澤五月選手か吉田知那美選手がコールして、2人スイープでコースを曲げていたら、という妄想もしたくなるような場面でした。
まあ、それが無理なのがミックスダブルスなのでしょうが。

それにしても、しぶとく勝っていったチャッスー。結果として予選から決勝まで全勝。
諦めなかったことが一番の勝因、と個人的には思いました。