直葬ではない生活保護者の葬儀1

久しぶりに、生活保護関係の話題です。
ネット上某所ほかで、生活保護の葬祭扶助では、直葬(火葬、埋葬、納骨等)しか認められない、というような記述を見かけました。

ちょっと微妙な部分があり、詳細は保護の実施機関(福祉事務所等)にご相談いただくべきとは思いますが、まるっきりの直葬ではない葬儀でも、ダメといわれた葬祭扶助を、審査請求で認められた例はあります。

※引用者注:伏字(○○・・・)の数を減らす等の修正を行っています。

 

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第1 審査会の結論
 ○○○○○所長(以下「処分庁」という。)が、審査請求人に対して平成○年○月○日付けで行った生活保護法(略。以下「法」という。)に基づく生活保護申請却下決定処分(以下「本件処分」という。)の取消しを求める審査請求(以下「本件審査請求」という。)は、認容すべきである。

第2~第4 略

第5 審査会の判断

1 法令等の規定
(1)法第4条第1項は、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」と定め、法第5条は「(前略)この法律の解釈及び運用は、すべてこの原理に基いてされなければならない。」と規定している。
(2)法第8条第1項は、「保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。」と規定している。
(3)法第18条は、「葬祭扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。1検案、2死体の運搬、3火葬又は埋葬、4納骨その他葬祭のために必要なもの」とし、第2項において「左に掲げる場合において、その葬祭を行う者があるときは、その者に対して、前項各号の葬祭扶助を行うことができる。
 1 被保護者が死亡した場合において、その者の葬祭を行う扶養義務者がないとき。2 死者に対しその葬祭を行う扶養義務者がない場合において、その遺留した金品で、葬祭を行うに必要な費用を満たすことのできないとき。」と定めている。
 また、上記第4号の「その他葬祭のために必要なもの」には、「死亡診断(中略)の外、棺、骨壺、位牌、祭壇、読経等が含まれる。」と解されている。
(4)告示において、茨木市の級地区分の葬祭扶助基準額は、大人206,000円、また、葬祭に要する費用の額が基準額を超える場合であって、葬祭地の市町村条例に定める火葬に要する費用の額が次に掲げる額を超えるときは、当該超える額600円を基準額に加算する等と定めている。
(5)「生活保護法による保護の実施要領」(平成36年4月1日厚生省発社第123号厚生事務次官通知。以下「次官通知」という。)第8の3の(3)のイは、収入として認定しないものの取扱いとして、「出産、就職、結婚、葬祭等に際して贈与される金銭であって、社会通念上収入として認定することが適当でないもの」と定めている。
(6)保護課長通知において、「葬祭扶助費は、その他の扶助費と同様に、支給に当たって、保護の補足性の原理、基準及び程度の原則を踏まえて対応する必要がある。そのため、葬祭扶助費の支給に当たっては、以下の事項に十分留意のうえ、適正な支給を行うこと。ア 葬祭扶助費は、葬祭に要する費用が、告示別表第8葬祭扶助基準並びに局長通知第7の9の(1)から(4)までの範囲内である場合に限って、死亡した被保護者の遺留金品を充当してもなお不足する費用について、支給するものであること。なお、葬祭扶助はあくまで最低限度の葬祭を行った場合に適用されるものであることから、高額な葬祭費用に対して葬祭扶助費の支給限度額を適用する取扱いは認められないので留意すること。」と記している。

2 認定した事実
 審査庁から提出された諮問書の添付書類(審理員意見書、事件記録等)及び平成30年2月6日付けで当審査会に提出された審査請求人の主張書面(以下これらを「本件記録」という。)によれば、以下の事実が認められる。(1)平成○年○月○日付けで、処分庁は、審査請求人世帯に対する法に基づく保護を開始した。
(2)平成○年○月○日、処分庁に対し、審査請求人から妻が亡くなった旨の報告があった。
(3)平成○年○月○日及び○日、審査請求人は妻の告別式を行った。
(4)平成○年○月○日、処分庁は、審査請求人から市営葬儀使用許可書、斎場使用申込書、A社の領収書、病院の入院費領収書及び葬儀費用の分納誓約書について各写し(以下「葬儀関係資料」という。)を受領した。
(5)(4)の同日後刻、処分庁はA社に電話し、審査請求人の妻の葬儀内容について、平成○年○月○日に通夜、同月○日に葬儀、(略)、僧侶の読経を依頼しており、他の葬儀と同様、特に華美でも質素でもなかったことを聴取した。
(6)(5)の同日後刻、処分庁は審査請求人に電話し、審査請求人の妻の葬儀内容について確認したところ、妻の姉が僧侶を呼ばないのはかわいそうだと言い、僧侶の費用○○○円は妻の姉から借りて支払ったこと、妻の姉は返さなくてもいいといってくれていること、花代は親族で出し合ったことを聴取した。
(7)平成○年○月○日、審査請求人は処分庁を訪れて葬祭扶助を申請したいという意思を表示した。これに対し処分庁は、僧侶に係る費用が○○○円もかかっていることから基準額を超える葬祭扶助の適用はできないと繰り返し説明したところ、結局、審査請求人は申請を行わず退所した。
(8)平成○年○月○日、審査請求人はあらためて処分庁に葬祭扶助申請(以下「本件申請」という。)を提出した。本件申請書中の「葬祭のため必要な金額」の欄(以下「金額欄」という。)にはその区分及び金額等は記載されていなかった。
(9)平成○年○月○日付けで、処分庁は、審査請求人に対し、葬祭費用合計額が葬祭扶助基準を超えており最低限度の葬祭を行っていないことを理由に、本件申請を却下する本件処分を通知した。

 

(つづく)