スキップから見た対外戦績

またカーリングの話です。

世界レベルの大会に複数回スキップとして出場した経験がある日本女子選手の対外戦績を調べてみました。
世界カーリング連盟のウェブサイトで確認できる大会ということで、
・オリンピック(正式競技のなる前のアルベールビル大会を含む)
・世界選手権
・世界ジュニア選手権
の出場が2回以上というのを目安にしましたが、戦績自体にはパシフィックアジア選手権や五輪最終予選、ワールドカップ(最近は開催されていませんが)なども含んでいます。
グランドスラムなどのツアー大会は含んでいません。

強豪国との対戦成績も知りたかったので、直近の北京五輪の出場国を順に並べてみました。「その他」はそれ以外の国のチームです。
なお、世界選手権にはスコットランドが出場していますが、ほぼオリンピックの英国代表と同じなので、同一とみなして集計しています(初期にはイングランドと日本の対戦もありますが、こちらは別扱いです)。
また、ロシアはドーピングが問題となって「ROC」など国名以外で出場している場合がありますが、同一国として集計しています。

慎重を期していますが、拾い誤りがあればすみません。

 

 

では、レジェンド・大久津(瀬口)真由美さんから。
瀬口さん時代、東光舗道の頃はかなり苦戦しています。強豪国とのレベル差は大きかったとおもいますが、この時代に「先進国」の技術や戦術などを学んだことが、のちの時代に生きてきたのではないでしょうか。
長野五輪を見据えて選抜チームが結成されてからは、カナダなど伝統国には分が悪いものの、勝率は向上しています。

 

元祖「天才少女」加藤章子さんは、ジュニア時代には6割を超える勝率をたたき出しています。他の人が苦手としている印象のあるスイスに勝ち越しているのも注目です。
ジュニア大会を卒業してから(どちらも同じ「シムソンズ」ですが)勝率を落としたものの、それでも、5割を超える安定した勝率を見せています。

 

小笠原(小野寺)歩さんは、このメンバーの中では、晩学型のスキップといえるでしょう。他のメンバーは、たいていジュニア時代からスキップをしていました(大久津さんについては詳細はわかりませんが、東光舗道に入ってからのように思います)。チーム青森で小野寺さんがスキップとなったのは、トリノ五輪前年の世界選手権の途中からではないでしょうか。
そういうことで、チーム青森時代には4割ちょうどの勝率しか残していません(勝ち星を稼げるパシフィック選手権でのスキップ歴がないということもありました)。が、そういう状況で、4勝5敗という星をオリンピックの舞台で残したのは、さすがの勝負強さといえるかもしれません。
出産を経てフォルティウス北海道銀行)で復帰してからは5割超の勝率を残しています。中国や韓国が強くなってきた時代で、両国への負け越しが目立ちますが、「その他」の諸国に無敗(18勝)というのは、なかなかできることではないでしょう。

 

目黒萌絵さんは、ジュニア時代(空知こざくら)からスキップとして活躍した選手ですが、ジュニア時代よりも、チーム青森での方が高い勝率を上げています。
なお、ほぼチーム青森というメンバーで2007年のユニバーシアード大会に出場していますが、これはジュニアの方で集計しています。このときは予選リーグ4勝5敗ながらタイブレークに勝って4位に滑り込み、準決勝に負けたものの3位決定戦でエクストラエンド(延長戦)1点差勝ちという勝負強さで銅メダルを勝ち取りました。

 

藤澤五月選手については、三つの時代に分けて集計します。
ジュニア時代はイブ・ミュアヘッド選手(英国)、アンナ・ハッセルボリ選手(スウェーデン)らとしのぎを削りながら5割台後半の勝率を残しています。
中部電力時代は5割を切っています。日本選手権では4連覇の偉業を成し遂げましたが、パシフィックアジア選手権中韓の壁が厚く、世界選手権の出場権を得られたのは2013年の一度だけでした(5勝6敗で12チーム中7位)。
ロコ・ソラーレでは、高勝率に転じ、というよりオリンピック、世界選手権など世界レベルの大会出場自体が飛躍的に増えています。中でも、スウェーデンに大きく勝ち越し(5勝2敗)というのが、他のスキップにはない特徴といえるでしょう。

 

吉村紗也香選手は、ジュニア時代は(大学チームなどジュニアでの活動期間が長かったこともありますが)6割台の好成績でした。特にカナダに4勝1敗と大きく勝ち越しているのが目立ちます。
フォルティウスに加入し、小笠原さんの退団後にスキップをするようになってからは、世界選手権には1回しか出場していませんが、やはりカナダには勝っています。

 

表に挙げていないチームでは、中部電力が(藤澤選手の退団後に)世界選手権に2回出場し、中嶋星奈選手、北澤育恵選手がそれぞれ1大会ずつスキップを務め(中嶋選手はセカンドでスキップでしたが)、5割かそれに近い星を残しています。

 

限られたデータの中で、誰が誰より強い、うまいということは断定しづらいと思います。
ただ、日本女子のレベルが上がってきて、どこが代表となってもそれなりの成績を残せる可能性が出てきた、ということはいえるのではないでしょうか。