ジェンダーギャップ指数5

前記事でも書きましたが、このジェンダーギャップ指数というのは、その国の男女の比較で算出されます。
他の国の女性よりも給料が多いか、とか、民主化が進んでいるか、とかは関係ありません。
経済面でいえば、男女ともに同じぐらい貧しい国の方が、それより豊かでも男性の方が所得が高い国よりもランク上位になります。

 

また、政治体制や社会文化が異なる国々を、共通の基準で比較するのは、なかなか難しいことです。
たとえば、政府側が議員を選ぶ国では(それを国会議員と呼ぶかどうかは議論があるでしょうが)女性議員の割合を増やすことは比較的容易ですが、国民の自由な投票により議員を選ぶ国では、政府側が女性議員の割合を増やそうとしても、その意図どおりには増やせないことがあります。
(男女にかかわらず後者の国の方が幸福だろうと私は考えますが、そうでない考え方に立つ国もあります。)

 

そういうことを前提に考慮したとしても、日本のジェンダーギャップ上の問題として、少なくとも政治や経済については大きな課題を抱えているとは思います。
経済については、やはり男女の賃金格差。管理職や専門技術職の割合の差もありますが、根底には「賃金収入を一定範囲に抑えて配偶者の扶養に入った方が税金等で有利」というような制度の問題があると思います。

 

政治については、なかなか手早い解消方法は思いつきません。
日本のような議院内閣制の国で女性閣僚を増やすためには、女性の国会議員を増やすことが必要でしょう。
では、女性の国会議員を増やすためにはどうするか、といえば、民主制の国では有権者がそれを望むかどうか、ということにかかってくるのでしょう。
手っ取り早く女性議員を増やそうとすれば、有力政党の比例名簿上位(当選圏)に女性候補者を並べるという方法もありますが、それが長続きするかどうかというと、結局は有権者の判断にかかってくると思います。

 

なお、これまでの記事中でも触れましたが、指数の基になっている数値の中で、疑問を感じるものもあります。
教育については、中等教育などの就学率です。
ひょっとすると、戦前・戦中・戦後すぐなど、女性の進学率が(同時期の男性に比べて)低かった頃の学歴が反映しているのかもしれません。
近年の状況で大学進学率などを考えれば、男児と女児の差よりも、その親の世代の経済状況の影響が大きいように思います。
たとえば、母子家庭の子どもたちの進学は、なかなか容易でない場合があります。
仮に、母子家庭の男児と、二人親世帯の女児とを比較すれば、後者の方が進学率が高いのではないでしょうか。
ジェンダーギャップの問題とは直接関係がなくなるかもしれませんが(無縁ではないと思います)、日本社会のあり方としては考えていくべき問題でしょう。

 

蛇足です。
最初の記事で、156か国のジェンダーギャップ指数のランクを紹介していますが・・・
https://jukeizukoubou.hatenablog.com/entry/2022/01/13/213156

この中には台湾や北朝鮮は含まれていません。
「台湾は国ではない、国連にも加盟していない」などと主張する国があるかもしれませんが、台湾の問題は置いても、北朝鮮は国連加盟国です。
だいたい193か国が加盟してたと思うので、国連に入っていても、上のランクに入っていない国が相当数あるはずです。
だから、というわけではありませんが、日本が156か国中の120位、というのも、あくまで一定のルールでランク付けした場合の目安、というべきでしょう。
悲観も楽観もしなくてよいが、特に政治と経済でジェンダー上の課題が大きい、努力していきましょう、というぐらいでいかがでしょうか。