東京パラ雑感

東京パラリンピックが終了しました。

 

選手の活躍については、本来は私ごときが順位づけするものではないでしょうが、
二冠(金メダル2個)の方から独断で。

 

殊勲:杉浦佳子選手
技能:佐藤友祈選手
敢闘:里見紗李奈選手

 

杉浦さんは、自転車個人ロードタイムトライアル C1-3(運動機能)と、同じく個人ロードレースで優勝。
冗談めかしていた「最最年少記録は二度と作れないけど、最年長記録ってまた作れますね」を、わずか三日後に実現するという有言実行を評価し、殊勲賞に。

佐藤さんは、400m T52(車いす)でパラリンピック新記録で優勝。
同じく1500mでは、米国のレイモンド・マーティン選手にぴたっとつかれるという状況で、記録更新から「勝つこと」に作戦を変更し、2個目の金メダル獲得、という柔軟な試合運びを評価し、技能賞に。

里見さんは、バドミントン・シングルスのWH1(車いす)という一番重い障害のクラスで優勝。
その次に重いWH2のクラスの山崎悠麻選手と組んだダブルスでも優勝。
後者については、重い(つまり可動範囲が狭い)側を攻めるのがセオリーらしく、山崎さんのカバーがなければ金メダルは難しかったとは思いますが、シングルスもダブルスも1セットを取られてからの逆転勝ちという粘り強さから、敢闘賞とします。

(異論はあるでしょう。)

 

他にも、印象に残った選手や競技はたくさんありました。

 

杉浦さんの対極、パラでの最年少メダル獲得の山田美幸選手(100m背泳ぎ S2(運動機能)、同じく500mで銀2個)は、14歳・中3とは思えないぐらいインタビューの受け答えがしっかりしていました。そういえば、ほかにも100m平泳ぎで優勝した山口尚秀選手など、知的障害を伴う自閉症とはわからないぐらいしっかりしたインタビュー対応の選手が目につきました。

山田さんのような両腕がなく、左右の脚の長さも違うという選手と、両脚の機能がなく、両腕が推進力という選手と、クラス分けをどう行うか、というのは難しい問題でしょう。今回のパラリンピックは、コロナ禍でクラス分けのための大会が事前に十分には行えなかった、ということで、涙を飲んだ選手も少なくなかったと思います。

たとえば、伊藤智也選手は車いす陸上界のレジェンドで、過去に複数の金メダルを取得して引退していましたが、若い車いす技術者などの勧めもあり、現役復帰しました。本来なら、佐藤さんと同じT52のクラスのはずでしたが、直前のクラス分けでT53という軽いクラスになってしまいました。しかし、それで出場をあきらめたりせず、400mT53クラスで予選敗退ながらもパーソナルベストを更新。57秒16というそのタイムは、仮にT52の決勝なら3位に相当する記録でした。風や温度など条件が違うから単純に比較できないにしても、同種目で銅メダルだった上与那原寛和選手らとメダル争いはできていたはずです。

 

競技として目を引いたのは、杉村英孝選手が個人 BC2(運動機能)で金メダルを取ったボッチャ。カーリングに似たところがあり、日本人向きのように思います。障害の有無や年齢にかかわらず、幅広い階層で楽しむことができそうで、今後、広がりそうな気がします。

 

車いす系の球技(ラグビー、バスケットボール、テニスなど)も人気でした。こちらについては、機会があれば、別記事にしたいと思っています。


さて。
閉会式は済みましたが、パラリンピックは、参加者が無事に帰国するまでがパラリンピックです(「遠足は、家に帰るまでが遠足」の真似)。
パラリンピアンには、いわゆる基礎疾患や、その他の身体上の難しさを抱えている人が少なくありません。
「Tokyoから新型コロナウイルスを持ち帰った」という関係者がいないことを願っています。

 

ここまで、今のところは、ですが、新型コロナウイルスに関連して深刻な状態になったアスリートは、オリ・パラを通じてニュースにはなっていません。
であれば、オリンピック・パラリンピック両方を通して、医療に従事した関係者、その医療従事者をオリ・パラ会場に送り出した派遣元の医療機関などこそ、真のMVPではないかと思います。