兵庫県知事選の結果

Q:兵庫県知事選で、維新と自民党本部などの推薦を受けた斎藤元彦氏が、自民党県議の多くが支持した金沢和夫氏らを破って当選しましたが。

A:金沢氏というより井戸後継が嫌か、斎藤氏というより自民党本部や維新系が嫌か、という消去法、マイナスの選挙戦だったかもしれません。丸川五輪相や西村経済再生担当相といった不人気閣僚が、感染者増加中の東京からわざわざ応援に駆けつけて、斎藤氏にはマイナスになったかもしれないのですが、それ以上に井戸氏の応援が金沢氏の足を引っ張った可能性はあるでしょうね。

 

Q:投票率は41.10%。前回より0.24ポイントという微増です。

A:新人ばかりなのに、6割近くの人は投票していないんですね。コロナ禍ということを考慮したとしても、どの候補も積極的には支持されていない感じでしょうか。

 

Q:井戸氏のコロナ対応がまずかったのでしょうか?

A:たとえば、大阪府の吉村知事は、対コロナ政策が優れていた、とは必ずしも言い切れませんが、特に昨年の最初の緊急事態宣言の頃は、府民への説明は自分の言葉でていねいに精力的に行っていました。それと比較すると井戸知事の説明は、質・量ともに見劣りした可能性があります。「大阪との不仲」を強調しようとする記者の挑発的質問に乗せられた面もあったと思います。
 ただ、井戸氏の、というより兵庫県側の対応として、特別にまずかったというわけではなかったと思います。というより、現在の制度で、知事や市町村長ができることというのは、そんなに変わりません。財政力によって、事業者に払える協力金が、東京>>大阪>兵庫 というような順番になるのは仕方がありませんが、あとは通勤通学など密接な関係の隣接府県が協力してメッセージを発する、というような、常識的なことを地道にやっていく、ということぐらいでしょう。その点で、井戸氏も、その下の副知事だった金沢氏も、責められる余地はあまりなかったと思います。

 

Q:井戸県政は評価するに値する、と?

A:必ずしもそうではありません(笑)
 阪神・淡路大震災の復興に関しては、井戸氏なりに努力はしたと思いますが、私の感覚からすればハコモノに偏っていたのではないかと。また、行財政改革のために職員が給与カットを受けて、これは知事給与も同様だったと思いますが、そういう厳しい状況下でも、毎年のように井戸知事は外遊していました。年に複数回の年もあったように思います。公用車のセンチュリーで批判を浴びていましたが、感覚が世間からずれていた面はあるでしょう。
 総務官僚出身のくせに、というと他の総務省関係者に怒られるかもしれませんが、失言報道は意外に多く、2008年の「関東で震災が起こればチャンス」発言とか、コロナ禍でも「何にもしていないのに、なんで慰労金を出すのか」発言(https://jukeizukoubou.hatenablog.com/entry/2020/07/14/221110)とか、いろいろありました。

 

Q:新型コロナの感染拡大について「諸悪の根源は東京」というのもありました。

A:あれは真実でしょう(笑)
 いえ、都民が悪いという意味ではなく、東京都から広がっている、というのは、それ以外の46道府県すべての人が思っていてもおかしくはないです。ただし、本当の諸悪の根源は、武漢の医師が初期に発した警告を圧殺した中国政府または中国共産党です。

 

Q:斎藤新知事に期待することは?

A:斎藤氏は世間で知られてなくて、あまりにも未知数なので、なんとも。ただ、ある程度以上の思考力のある人間なら、大阪府兵庫県の違いもわかるし、維新府政の長所や短所、自公政権の問題点など、何を生かして何を改めるか、というようなことを、是々非々で判断することは可能だろうと思います。県議会がそれを支持するかどうかは別の問題ですが。
 新型コロナ対策についていえば、たとえば保健師クラスターを追っていくような能力は、大阪府よりも兵庫県の方が優れている可能性があります。それは個の保健師の能力差というのではもちろんなくて、兵庫県の方が保健師配置がマシ、というような状況によるものかもしれません(ただし、別図「常勤保健師数の推移」を見ればわかるように、兵庫県も全国平均は下回っていますが)。斎藤氏にまともな判断力があれば、この分野は今の人材を生かすか、さらにパワーアップできるよう手厚くするか、という方向でしょう。
 井戸県政の問題としては、それほど克己力があるわけでもない人物が長い間リーダーを続けてしまった、ということにあります。それなりに能力があって平均点が高い人間でも、間違えることがあります。そこで部下など周囲の人間が「お言葉ですが」と忠告できるか、リーダーがその忠告を受け入れることができる人物でいられるか、ということが重要です。想像ですが、井戸氏の周囲には、井戸氏が間違ったときに忠告できる人間がいなかったのではないか、という気がします。金沢氏が責められるとすれば、ナンバー2でありながら、井戸氏に忠告できなかった、ということではないでしょうか。これは推測にすぎませんが。

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Q:東京が少ない! でもグラフを見ると、保健師数よりも、井戸知事が長かった、ということの方が印象が強いですね。

A:そうですね。ネットなどで批判されているほど無能な知事ではなかったとは思いますが、少なくとも5期20年再選されるほどの人物ではなかった。共産党以外の主要政党が相乗りで支持してきた、ということで、各党の責任も重いのではないかと思います。

 なお、保健師数など保健所の職員数の問題については、以下の過去記事で扱っています。
https://jukeizukoubou.hatenablog.com/entry/2021/06/13/165517
https://jukeizukoubou.hatenablog.com/entry/2020/05/10/164010