介護報酬パブコメ結果詳細5

介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進

CHASE・VISITを活用し、科学的エビデンスに基づいてPDCAサイクルを回すことは有用で、それを評価することは一定意味のあることだと思う。

 賛成のご意見として承ります。


科学的介護の名のもとにビッグデータ活用を進めていくとのことだが、高齢者の心身の状況は個別性が強く、ビッグデータや平均値でひとりの人間の生活を把握することは難しいと思う。マイノリティや個別性・個人の尊厳に対する危険性を孕んでいるのではないか。数値化できることのみに介護の内容が偏重したり、クリームスキミングが生じる危険はないか。

 高齢者の自立支援・重度化防止という制度の目的に沿って、サービスの質の評価やデータ活用を行いながら、科学的に効果が裏付けられた質の高いサービスの提供を推進していくこととしています。
 また、質の評価に当たっては、クリームスキミングにも留意しつつ、ストラクチャー、プロセス、アウトカムの評価をバランス良く組み合わせていくことが重要であると考えています。


科学的介護情報システム(LIFE)に関して、介護事業所での入力作業の負担に対して単位数が少ない。小規模事業所でも増収となるのか、また対応可能か。事務作業の増加によりサービスに影響が出ないように留意してほしい。またケアマネジャーに負担のしわ寄せが来ないようにしてほしい。
CHASEやVISITなど横文字にしないで、介護に関わる人に分かりやすく、取り組みやすい、効果のあるものにしてほしい。

 介護関連データの収集・活用及びPDCAサイクルに沿った科学的介護を推進していく観点からの評価を設けていますが、あわせて、介護記録ソフトのデータ連携等を進め、介護現場の負担の軽減にも努めてまいります。
 また、CHASEとVISITにつきましては、令和3年4月以降、科学的介護情報システム(LIFE ライフ)として一体的に運用して行く予定です。


科学的介護情報システムの信頼性は大丈夫か。システムやサーバー側の不具合で大きな支障が生じないか。個人情報を知られたくない国民の権利の保障や利用の取扱いについても疑問がある。
また、加算要件に「フィードバックの活用」とあるが、フィードバック情報が個別の利用者には適当でない場合も考えられる。あくまで利用者の支援のための参考情報であり、利用者の意思や状況に反する強要が行われないように通知等に記載すべき。

 LIFEへのデータ提出に当たっては、氏名や被保険者番号等の個人情報は求めないこととしていますが、システムのセキュリティの確保につきましては、引き続き留意して参りたいと考えております。フィードバック情報は、ケアの質の向上に活用いただきたいと考えており、利用者単位だけではなく、事業所としての取組の見直しにおいても活用して頂くことを想定しております。


国にデータを提供することで利用料が高くなることは、利用者には理解されないと思う。

 介護関連データの収集・活用及びPDCAサイクルに沿った科学的介護を推進していく観点からの評価を設けていますが、これは、データを提出すること自体を評価するものではなく、提出データやフィードバック情報を活用して頂き、利用者に提供される介護の質の向上を図ることを評価する加算です。


科学的介護情報システムへのデータ入力に当たり、入所者、家族に同意を得ることとなるが、全ての入所者から同意を得ることは困難と予想され、全体の7割以上でよいなど基準を作成してほしい。
また、今まで任意とされてきた利用者情報の提出が加算により誘導されることについて、利用者と事業所の関係性やコンプライアンス上の問題はないか。

 科学的介護推進体制加算については、原則、事業所の全ての利用者のデータの提出し、フィードバックを受け、事業所単位でのPDCAサイクルやケアの質の向上を推進することを評価することとしています。
 なお、LIFEへのデータ提出に当たっては、氏名や被保険者番号等の個人情報は、求めないこととしています。


ADL維持等加算について、前回改定のパブリックコメントで、「ADL利得(BI利得)が0の利用者を0として計算するのは、「維持」を評価することにはならないのではないか」と意見提出したところ、「評価対象利用期間においてADLが向上した利用者の割合が増えず、ADLが維持された利用者の割合のみが増えた場合でも、評価される内容となっています」という回答があったが、今回の改正案では、上位下位それぞれ1割除外し、かつADL利得の平均が1以上でないと要件を満たさないため、維持群が評価されないのではないか。「ADL維持等加算」の名称はおかしい。
そもそも、放置すれば急激に悪化しかねない高齢者のADL等の変化を緩やかにするというだけでもサービスの価値はあると考えられるところ、それを一定期間維持しているだけでも十分評価に値するのではないか。

 ADL維持等加算は、ADLを維持・改善する事業者を評価する加算です。「ADL利得」の詳細な算出方法については、今後、留意事項通知等においてお示ししますが、初月のADL値等に応じて調整を行うこととしており、ADLの維持を評価する仕組みとなっております。


寝たきり防止等、重度化防止の取組の推進

褥瘡マネジメント加算等や排せつ支援加算の見直しについて、アウトカムを評価することは否定しないが、「褥瘡の発生のないこと」や「おむつ使用ありからおむつ使用なしに改善していること」などを加算の要件とすることが、高齢者の介護にとって適切なのか疑問。

 自立支援・重度化防止の取組を進める観点から、褥瘡マネジメント加算について褥瘡の発生予防や状態改善等を評価する区分や、排せつ支援加算について排せつ状態の改善等を評価する区分を創設することとしています。
 なお、具体的な要件については、関係者の参画する社会保障審議会介護給付費分科会における議論を踏まえ決まったものです。

 

 

(つづく)