香港の英中共同宣言1

新型コロナウイルスについての緊急事態宣言のニュースがあふれていますが、今回は、香港返還にかかる英中共同宣言を。

 

データベース「世界と日本」(代表:田中明彦
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学東京大学東洋文化研究所
[文書名] 香港問題に関する英中共同声明(中華人民共和国政府とグレートブリテン北アイルランド連合王国政府の香港問題に関する共同声明)より抜粋します。
https://worldjpn.grips.ac.jp/documents/texts/docs/19841219.D1J.html

<注:引用に際し、一部の漢数字のアラビア数字化、句読点の削除、色塗り文字強調など軽微な変更を行っています。>

 


三、中華人民共和国政府は、中華人民共和国が香港に対し次のような基本的な方針、政策をとることを声明する。

(1)国家の統一と領土保全を擁護するため、また香港の歴史と現状を考慮して、中華人民共和国は、香港に対し主権行使を回復するにあたり、中華人民共和国憲法第31条の規定にもとづき、香港特別行政区を設けることを決定した。

(2)香港特別行政区中華人民共和国中央人民政府の直轄下に置かれる。外交と国防が中央人民政府の管理に属するほか、香港特別行政区は高度の自治権を享有する。

(3)香港特別行政区は行政管理権、立法権、独立した司法権と終審権を享有する。現行の法律は基本的には変わらない。

(4)香港特別行政区政府は現地人によって構成される。行政長官は現地で選挙または協議を通じて選出され、中央人民政府が任命する。主要公務員は香港特別行政区行政長官が指名し、中央人民政府に報告し、中央人民政府が任命する。香港の政府諸部門にかねてより勤務していた中国籍と外国籍の公務員と警察要員は留用することができる。香港特別行政区の政府諸部門は、イギリス籍またはその他の外国籍にある者を招聘して顧問またはなんらかの公職につかせることができる。

(5)香港の現行の社会・経済制度は変わらず、生活様式は変わらない。香港特別行政区は法律にもとづき、人身、言論、出版、集会、結社、旅行、移転、通信、罷業、職業選択、学術研究、宗教信仰の諸権利と自由を保障する。個人財産、企業所有権、合法的相続権および外部からの投資は、いずれも法律の保護を受ける。

(6)香港特別行政区は、自由港と独立関税地区の地位を保持する。

(7)香港特別行政区は国際金融センターの地位を保持し、ひきつづき外国為替、金、証券、先物取引に市場を開放する。資金の流入、流出は自由である。香港ドルはひきつづき流通し、自由に他の通貨と交換することができる。

(8)香港特別行政区は財政の独立を保持する。中央人民政府は香港特別行政区から徴税しない。

(9)、香港特別行政区連合王国その他の諸国と互恵の経済関係を樹立することができる。連合王国その他の諸国の香港における経済的利益は配慮される。

(10)香港特別行政区は「中国香港」の名称で、独自に各国、各地区および関係国際機構と経済・文化関係を保持し発展させるとともに、関係協定を締結することができる。
 香港特別行政区政府は独自に、出入旅行証を発行することができる。

(11)香港特別行政区の社会治安は、香港特別行政区政府が責任をもって維持する。

(12)中華人民共和国の香港に対する前記の基本的な方針、政策および本共同声明の第一付属文書の前記基本方針、政策に対する具体的説明については、中華人民共和国全国人民代表大会中華人民共和国香港特別行政区基本法において規定するとともに、五十年間は同規定を変えない。

七、中華人民共和国政府と連合王国政府は、前記の諸声明と本共同声明の付属文書をすべて実施することに同意する。

八、本共同声明は批准を受けなければならず、批准書交換の日から発効する。批准書は1985年6月30日以前に北京で交換されるものとする。本共同声明とその付属文書は同等の拘束力を持つ。

1984年12月19日、北京で調印、中国語と英語で2部作成され、ともに同等の効力を持つ。

 

中華人民共和国政府代表
(署名)

 

グレートブリテン北アイルランド連合王国政府
(署名)