未届けの有料老人ホーム(復習を兼ねて?)

老人福祉法による届け出を行っていない有料老人ホームは、住所地特例の対象でしょうか?

 

有料老人ホームは、老人福祉法では次のように定義されています。

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(届出等)
第二十九条 有料老人ホーム(老人を入居させ、入浴、排せつ若しくは食事の介護、食事の提供又はその他の日常生活上必要な便宜であつて厚生労働省令で定めるもの(以下「介護等」という。)の供与(他に委託して供与をする場合及び将来において供与をすることを約する場合を含む。第十一項を除き、以下この条において同じ。)をする事業を行う施設であつて、老人福祉施設認知症対応型老人共同生活援助事業を行う住居その他厚生労働省令で定める施設でないものをいう。以下同じ。)を設置しようとする者は、あらかじめ、その施設を設置しようとする地の都道府県知事に、次の各号に掲げる事項を届け出なければならない。
 一 施設の名称及び設置予定地
 二 設置しようとする者の氏名及び住所又は名称及び所在地
 三 条例、定款その他の基本約款
 四 事業開始の予定年月日
 五 施設の管理者の氏名及び住所
 六 施設において供与をされる介護等の内容
 七 その他厚生労働省令で定める事項
2 前項の規定による届出をした者は、同項各号に掲げる事項に変更を生じたときは、変更の日から一月以内に、その旨を当該都道府県知事に届け出なければならない。
3 第一項の規定による届出をした者は、その事業を廃止し、又は休止しようとするときは、その廃止又は休止の日の一月前までに、その旨を当該都道府県知事に届け出なければならない。
(第4項以下は一応略)
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そして、
<入浴、排せつ若しくは食事の介護、食事の提供又はその他の日常生活上必要な便宜であつて厚生労働省令で定めるもの>
については、同法施行規則で、

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(法第二十九条第一項に規定する厚生労働省令で定める便宜)
第二十条の三 法第二十九条第一項に規定する厚生労働省令で定める便宜は、洗濯、掃除等の家事又は健康管理とする。
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とされています。

つまり、老人福祉施設認知症グループホームではない施設で、
老人を入居させ、
介護、食事、家事、健康管理のどれか一つ以上を提供すると、有料老人ホームとなります。

この定義に該当すると、都道府県に届出をしなければなりません。
この届出は事前に行う必要がありますが、届出を行っていない施設に対しても、都道府県の指導権限はあります。

なお、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)も有料老人ホームとしての定義を満たすものが数多くありますが、サ高住として登録されている場合には、届出義務はありません。

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高齢者の居住の安定確保に関する法律
(老人福祉法の特例)
第二十三条 第五条第一項の登録を受けている有料老人ホームの設置者(当該有料老人ホームを設置しようとする者を含む。)については、老人福祉法第二十九条第一項から第三項までの規定は、適用しない。
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ただし、適用されないのは第1項から第3項までなので、第4項以下は適用されます。

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4 有料老人ホームの設置者は、当該有料老人ホームの事業について、厚生労働省令で定めるところにより、帳簿を作成し、これを保存しなければならない。
5 有料老人ホームの設置者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該有料老人ホームに入居する者又は入居しようとする者に対して、当該有料老人ホームにおいて供与をする介護等の内容その他の厚生労働省令で定める事項に関する情報を開示しなければならない。
6 有料老人ホームの設置者は、家賃、敷金及び介護等その他の日常生活上必要な便宜の供与の対価として受領する費用を除くほか、権利金その他の金品を受領してはならない。
7 有料老人ホームの設置者のうち、終身にわたつて受領すべき家賃その他厚生労働省令で定めるものの全部又は一部を前払金として一括して受領するものは、当該前払金の算定の基礎を書面で明示し、かつ、当該前払金について返還債務を負うこととなる場合に備えて厚生労働省令で定めるところにより必要な保全措置を講じなければならない。
8 有料老人ホームの設置者は、前項に規定する前払金を受領する場合においては、当該有料老人ホームに入居した日から厚生労働省令で定める一定の期間を経過する日までの間に、当該入居及び介護等の供与につき契約が解除され、又は入居者の死亡により終了した場合に当該前払金の額から厚生労働省令で定める方法により算定される額を控除した額に相当する額を返還する旨の契約を締結しなければならない。
9 有料老人ホームの設置者は、当該有料老人ホームに係る有料老人ホーム情報(有料老人ホームにおいて供与をする介護等の内容及び有料老人ホームの運営状況に関する情報であつて、有料老人ホームに入居しようとする者が有料老人ホームの選択を適切に行うために必要なものとして厚生労働省令で定めるものをいう。)を、厚生労働省令で定めるところにより、当該有料老人ホームの所在地の都道府県知事に対して報告しなければならない。
10 都道府県知事は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の規定により報告された事項を公表しなければならない。
11 都道府県知事は、この法律の目的を達成するため、有料老人ホームの設置者若しくは管理者若しくは設置者から介護等の供与(将来において供与をすることを含む。)を委託された者(以下「介護等受託者」という。)に対して、その運営の状況に関する事項その他必要と認める事項の報告を求め、又は当該職員に、関係者に対して質問させ、若しくは当該有料老人ホーム若しくは当該介護等受託者の事務所若しくは事業所に立ち入り、設備、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
12 第十八条第三項及び第四項の規定は、前項の規定による質問又は立入検査について準用する。
13 都道府県知事は、有料老人ホームの設置者が第四項から第九項までの規定に違反したと認めるとき、入居者の処遇に関し不当な行為をし、又はその運営に関し入居者の利益を害する行為をしたと認めるとき、その他入居者の保護のため必要があると認めるときは、当該設置者に対して、その改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
14 都道府県知事は、有料老人ホームの設置者がこの法律その他老人の福祉に関する法律で政令で定めるもの若しくはこれに基づく命令又はこれらに基づく処分に違反した場合であつて、入居者の保護のため特に必要があると認めるときは、当該設置者に対して、その事業の制限又は停止を命ずることができる。
15 都道府県知事は、前二項の規定による命令をしたときは、その旨を公示しなければならない。
16 都道府県知事は、介護保険法第四十二条の二第一項本文の指定(地域密着型特定施設入居者生活介護の指定に係るものに限る。)を受けた有料老人ホームの設置者に対して第十四項の規定による命令をしたときは、遅滞なく、その旨を、当該指定をした市町村長に通知しなければならない。
17 都道府県知事は、有料老人ホームの設置者が第十四項の規定による命令を受けたとき、その他入居者の心身の健康の保持及び生活の安定を図るため必要があると認めるときは、当該入居者に対し、介護等の供与を継続的に受けるために必要な助言その他の援助を行うように努めるものとする。
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で、住所地特例について。

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介護保険法第8条
11 この法律において「特定施設」とは、有料老人ホームその他厚生労働省令で定める施設であって、第二十一項に規定する地域密着型特定施設でないものをいい、「特定施設入居者生活介護」とは、特定施設に入居している要介護者について、当該特定施設が提供するサービスの内容、これを担当する者その他厚生労働省令で定める事項を定めた計画に基づき行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話であって厚生労働省令で定めるもの、機能訓練及び療養上の世話をいう。

(法第八条第十一項の厚生労働省令で定める施設)
第十五条 法第八条第十一項の厚生労働省令で定める施設は、次のとおりとする。
 一 養護老人ホーム
 二 軽費老人ホーム
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ということで、有料老人ホームは(地域密着型特定施設入居者生活介護の指定を受けていないものは)特定施設に該当します。
(ただし、サ高住である有料老人ホームについては、平成27年4月1日施行の法改正により有料老人ホームとなったので、それ以前の入居者については該当しないことになります。)

 

したがって、特定施設に該当すれば、未届けの有料老人ホームであろうが、特定施設入居者生活介護の指定を受けていなかろうが、住所地特例の対象となります。